「運動をしたほうが良いのはわかるけど、何をすればいいのか・・」
「少し息が切れるくらい運動したほうが、健康にはいいのかしら?」
「70歳を過ぎたら、あまり頑張って運動しないほうがいいのかしら?」
そんな疑問をお持ちの方はいらっしゃいませんか?
健康のために運動が大切だということは、多くの方がご存じだと思います。
しかし、意外と知られていないのが「自分に合った運動の強さ」です。
実は、同じ速さで歩いていても、ある人にとっては楽な運動でも、別の人にとってはかなりきつい運動になることがあります。
特に高齢になると、体力や持病、普段の運動習慣によって、無理なく行える運動の強さには大きな個人差があります。
そこで今回は、特別な機械を使わずに運動の強さを確かめられる「会話テスト」という方法をご紹介します。
さらに、70代・80代の方にも役立つ、安全に運動を続けるための7つのコツについても解説します。
この記事でわかること
- 高齢者にとって適切な運動の強さを考える方法
- 会話ができるかどうかで運動強度を確かめる「会話テスト」のやり方
- 運動中に注意したい症状と、安全に続けるための7つのコツ
高齢者の運動は「強ければ強いほどよい」わけではありません
運動というと、汗をたくさんかいたり、息が切れるほど頑張ったりすることが大切だと思っていませんか?
もちろん、体力に応じて適度な負荷をかけることには意味があります。
しかし、健康づくりのための運動は、必ずしも激しいものである必要はありません。
厚生労働省が公表した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者について、個人差を踏まえて運動の強さや量を調整し、できることから取り組むよう勧めています。
また、推奨される運動量に届かない場合でも、今より少しでも多く体を動かすことが大切だとされています。
つまり、70歳だからこの運動、80歳だからこの運動と、年齢だけで決める必要はないのです。
大切なのは、現在の体力や健康状態に合わせて、無理なく続けられる運動を選ぶことです。
そもそも「運動強度」とは何でしょうか?
運動強度とは、簡単にいうと「その運動が体にとってどのくらいきついか」を表すものです。
たとえば、ゆっくり歩く場合と、坂道を速足で歩く場合では、体にかかる負担が違いますよね。
この違いが運動強度です。
ただし、ここで覚えておきたいことがあります。
それは、同じ運動でも、人によって感じる強さが違うということです。
普段からよく歩いている方なら、少し速く歩いても平気かもしれません。
一方、最近あまり外出していない方や、体力が低下している方にとっては、普通の速さで歩くだけでも息が弾むことがあります。
そのため、運動の強さを考えるときには、歩く速さや運動時間だけでなく、自分自身がどのくらいきついと感じているかも大切な目安になります。
あなたに合ってる運動は、「会話ができる」余裕があること
そこで知っていただきたいのが「会話テスト」です。
会話テストとは、運動中にどのくらい自然に話せるかを確認して、運動強度の目安にする方法です。
米国疾病対策センター(CDC)でも、運動の強さを判断する簡単な方法として紹介されています。
特別な測定器具は必要ありません。
運動中の呼吸の状態と、話しやすさを確かめるだけです。
① 楽に会話できる状態
歩きながら普段とほとんど変わらず話せる状態です。
呼吸が大きく乱れず、歌を歌うこともできるような場合は、一般的に比較的軽い運動強度の目安になります。
たとえば、ゆっくりした散歩や、家の中での軽い移動などが当てはまる場合があります。
ただし、同じ動作でも体力によって感じ方は異なります。
② 会話はできるけれど、歌うのは難しい状態
少し呼吸が速くなり、息が弾んでいるものの、会話は続けられる状態です。
この状態は、一般的に「中強度」の有酸素運動を行っているときの目安とされています。
中強度とは、軽すぎず、激しすぎない程度の運動のことです。
健康づくりのための有酸素運動では、この中強度が一つの目安になります。
ただし、すべての高齢者が最初からこの強さを目指す必要はありません。
普段運動していない方は、もっと楽な強さから始めて構いません。
③ 数語話すだけで息継ぎが必要になる状態
息がかなり弾み、短い言葉を話すだけでも呼吸を整える必要がある状態です。
このような状態は、一般的に強い運動をしているときの目安になります。
運動に慣れている方であっても、体調や持病に応じた注意が必要です。
特に高齢者が新しく運動を始める場合には、最初からこのような強さを目指す必要はありません。
なお、会話テストは主にウォーキングなどの有酸素運動の強さを判断するための目安です。筋力トレーニングなど、すべての運動にそのまま当てはめられるものではありません。
「少し息が弾む」ことと「危険な息切れ」は違います
ここで、一つ注意していただきたいことがあります。
運動によって呼吸が少し速くなること自体は、必ずしも異常ではありません。
しかし、普段とは違う強い息苦しさが突然現れたり、胸の痛みやめまいなどを伴ったりする場合は別です。
こうした症状を「運動しているから当然」と考えてはいけません。
会話テストは便利な方法ですが、病気の有無や運動の安全性を診断できるものではありません。
特に心臓や肺の病気がある方、以前より息切れが強くなった方は、運動の強さを自己判断せず、医療機関に相談することが大切です。
もう一つの目安は「自分がどのくらいきついと感じるか」
運動の強さを確かめる方法には、会話テスト以外にも、自分が感じるきつさを数字で表す方法があります。
たとえば、座って安静にしている状態を「0」、これ以上頑張れないほどきつい状態を「10」として考えます。
CDCでは、この10段階の尺度で、中強度の有酸素運動はおおむね「5~6」、強い運動は「7~8」程度と説明しています。
ただし、これは運動強度を理解するための一般的な目安です。
体力が低下している方や、運動を始めたばかりの方が、無理に「5~6」を目指す必要はありません。
まずは楽にできる範囲で始め、体調を確かめながら少しずつ調整していきましょう。
厚生労働省が勧める高齢者の身体活動量は?
では、高齢者は1日にどのくらい体を動かすとよいのでしょうか?
「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者に対して、歩行またはそれと同等以上の強さの身体活動を、1日40分以上行うことを推奨しています。
これは歩数にすると、おおむね1日6,000歩以上に相当する目安です。
ただし、ここでいう40分は、必ずしも40分間続けて歩かなければならないという意味ではありません。
買い物、外出、家事など、日常生活の中で体を動かすことも身体活動に含まれます。
また、推奨される強さや量には個人差があります。
体力や健康状態によっては、40分という目安が難しい場合もあります。
そのような方は、まず今より少しでも体を動かすことから始めましょう。
「6,000歩に届かなかったから意味がない」ということではありません。
無理に目標を達成しようとして、体調を崩したり、転倒したりしては本末転倒です。
70代から実践したい!安全に運動を続ける7つのコツ
1.最初の数分はゆっくり体を動かす
運動を始めるとき、いきなり速く歩いたり、強い運動をしたりしていませんか?
ある程度の強さの運動を行う場合には、準備運動が大切です。
たとえば、ウォーキングをするなら、最初はゆっくり歩き、体の動きや呼吸の状態を確かめながら徐々に速度を上げましょう。
特に寒い季節には、体が冷えた状態から急に激しい運動を始めないようにしましょう。
2.運動中は、ときどき会話できるか確かめる
歩いている途中で、無理なく一文を話せるかどうかを確かめてみましょう。
たとえば「今日は気持ちのよい天気ですね」と話してみる方法があります。
会話を続けられるけれど、少し息が弾んでいるなら、中強度の有酸素運動の目安になる場合があります。
一方、短い言葉を話すだけでも苦しい場合は、運動が強すぎる可能性があります。
運動の強さを落とすか、必要に応じて休みましょう。
ただし、急な強い息苦しさなどの異常がある場合は、運動を中止して適切な対応をしてください。
3.その日の体調によって運動量を変える
昨日は30分歩けたから、今日も必ず30分歩かなければならない。
そんなふうに考える必要はありません。
睡眠不足や疲労、風邪などによって、体調は日々変化します。
体調が悪いときに無理をして運動を続けることは避けましょう。
普段と違う不調がある日は、運動を休むことも大切な健康管理です。
4.運動時間は少しずつ増やす
これまで運動習慣がなかった方が、突然毎日長時間歩き始めるのはおすすめできません。
まずは、無理なくできる時間から始めましょう。
たとえば、体調に問題がなく、歩行が安定している方なら、5分程度の短い散歩から始める方法もあります。
慣れてきたら、少しずつ時間を延ばしていきます。
大切なのは、最初から頑張りすぎないことです。
5.運動が終わったら急に動きを止めない
少し息が弾むような運動をしたあと、急に立ち止まると、血圧などが変化して体調が悪くなる場合があります。
そのため、運動の終わりには徐々に強さを落とす「整理運動」が勧められています。
たとえば、速めに歩いていた場合は、最後にゆっくり歩く時間を設けましょう。
厚生労働省の安全対策に関する情報では、運動後に5~10分ほどのクールダウンを行うことが紹介されています。
ただし、胸痛や強いめまいなどの異常が起きた場合は、整理運動を優先せず、直ちに運動を中止してください。
6.運動中の水分補給も忘れない
運動中は汗をかくことで、体の水分が失われます。
暑い日だけでなく、涼しい季節でも、運動の内容や体調に応じた水分補給を心がけましょう。
特に高齢者は、喉の渇きを感じにくくなることがあります。
ただし、心不全や腎臓病などで水分量を制限されている方は、医師の指示に従ってください。
7.歩数や時間だけでなく「体調」も記録してみる
健康のために歩数計を使っている方も多いと思います。
もちろん、歩数や運動時間を記録することは、運動習慣を振り返るために役立ちます。
しかし、それだけではなく、運動中のきつさや運動後の体調も確認してみましょう。
たとえば、カレンダーに次のように記録する方法があります。
- 運動した時間:10分
- 運動の強さ:会話ができる程度
- 運動中の体調:問題なし
- 運動後の疲れ:軽い
こうした記録を続けると、自分に合った運動の量や強さを振り返りやすくなります。
血圧の薬を飲んでいる方は「心拍数」だけで判断しないで
最近では、腕時計などで心拍数を測定できる機器も増えてきました。
心拍数は運動強度を考える際の参考になりますが、注意が必要な場合もあります。
厚生労働省の運動安全対策に関する情報では、一部の降圧薬などが心拍数に影響するため、心拍数だけでは運動の強さを適切に判断できない場合があると説明されています。
そのため、薬を服用している方は、心拍数だけを頼りに運動強度を決めないことが大切です。
会話のしやすさや自分が感じるきつさも参考になりますが、持病がある場合には医師などから指示された運動の範囲を優先してください。
運動中にこんな症状が出たら注意してください
健康づくりのための運動で、無理をする必要はありません。
厚生労働省の資料では、運動中に次のような異変が現れた場合、直ちに運動を中止するよう注意しています。
- 胸の痛みや圧迫感
- 動悸
- めまいやふらつき
- 冷や汗
- いつもと違う強い疲労感
- 強い空腹感や手足のふるえ
- 関節や筋肉の強い痛み
また、突然の強い息苦しさにも注意が必要です。
胸の強い痛みや圧迫感、急な呼吸困難、意識を失うなどの症状がある場合には、心臓や肺などの重大な病気が関係している可能性があります。
そのような場合は、無理に歩き続けず、必要に応じて119番に連絡してください。
症状が軽くても、運動中の胸痛や普段と違う息切れが繰り返される場合は、医療機関で相談しましょう。
運動を始める前に医師へ相談したほうがよい人
特に次のような方は、新しく運動を始めたり、運動の強さを上げたりする前に、かかりつけ医へ相談することをおすすめします。
- 心臓や肺の病気がある方
- 血圧や血糖値の管理が十分にできていない方
- 運動すると胸の痛みや強い息切れが出る方
- めまいや失神を経験したことがある方
- 関節や腰などに強い痛みがある方
- 長期間ほとんど運動していなかった方で、健康状態に不安がある場合
持病があるからといって、必ずしも運動ができないわけではありません。
病気の状態に合わせて運動の種類や強さを調整することで、安全に体を動かせる場合もあります。
大切なのは、自分の健康状態を確認したうえで取り組むことです。
まずは「無理なく歩ける時間」から始めてみましょう
ここまで読んで、「では、私は何から始めればいいの?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
普段あまり運動していない方で、医師から運動を制限されておらず、歩行に問題がない場合は、次のような方法から始めてみてはいかがでしょうか。
最初の数分:ゆっくり歩く
まずは体調を確認しながら、ゆっくり歩きます。
呼吸が苦しくないか、足元がふらつかないかなどを確かめましょう。
慣れてきたら:少しだけ歩く速さを調整する
体調に問題がなく、楽に歩ける場合は、少しだけ速さを変えてみてもよいでしょう。
会話テストを参考にしながら、自分にとって無理のない強さを探してみます。
ただし、最初から息が弾む強さを目指す必要はありません。
最後の数分:再びゆっくり歩く
運動の終わりには、徐々に歩く速さを落とします。
運動後も体調に変化がないか確認しましょう。
なお、ここで紹介した方法は、健康状態に問題がない方が運動を始める際の一般的な例です。
歩行が不安定な方や持病がある方は、医師や理学療法士などの専門家に相談し、自分に合った運動方法を選んでください。
運動は「人と比べないこと」も大切です
近所の方が毎日1万歩歩いていると聞くと、「自分もそれくらい歩かないといけないのかな」と思うかもしれません。
しかし、健康状態も体力も、人それぞれ違います。
同じ年齢でも、長年運動を続けている方と、最近運動を始めた方では、無理なく行える運動の強さは異なります。
大切なのは、他人の歩数や運動時間に合わせることではありません。
昨日までほとんど体を動かしていなかった方が、今日は少しだけ外を歩けた。
それも立派な一歩です。
運動は、頑張りすぎて数日でやめてしまうより、自分に合った方法を見つけて続けていくことが大切です。
まとめ|70代からの運動は「自分に合った強さ」を大切に
今回は、高齢者の運動強度についてご紹介しました。
覚えていただきたいのは、運動の強さは年齢だけでは決められないということです。
ウォーキングなどの有酸素運動では、会話ができるかどうかが、運動強度を確かめる一つの目安になります。
しかし、会話ができるから絶対に安全というわけではありません。
運動中は自分の体調にも気を配り、胸の痛みや強い息苦しさ、めまいなどが現れた場合は無理をしないことが大切です。
また、厚生労働省が示す運動量は、あくまで健康づくりのための目安です。
すべての高齢者が、最初から同じ運動量を達成する必要はありません。
「今の自分にできることを、無理なく、少しずつ」
そんな気持ちで、毎日の生活に体を動かす時間を取り入れてみてください。
今日の小さな一歩が、これからの健康づくりにつながっていくかもしれません。
参考文献・情報源
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」、2024年公表。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/undou/index.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 推奨シート:高齢者版」、2024年3月19日更新。
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-004.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 情報シート:身体活動・運動を安全に行うためのポイント」、2024年3月19日更新。
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-008.html - 米国疾病対策センター(CDC)「How to Measure Physical Activity Intensity」、2025年12月4日更新。
https://www.cdc.gov/physical-activity-basics/measuring/index.html - 英国国民保健サービス(NHS)「Physical activity guidelines for older adults」、2024年8月15日更新。
https://www.nhs.uk/live-well/exercise/physical-activity-guidelines-older-adults/ - 米国心臓協会(AHA)「Warning Signs of a Heart Attack」、参照日:2026年10月13日。
https://www.heart.org/en/health-topics/heart-attack/warning-signs-of-a-heart-attack





