勝海舟とは
勝海舟といえば江戸時代末期の徳川幕府の家臣で、戊辰戦争で新政府軍が江戸に攻め入った時、旧幕府軍の代表として新政府軍のリーダー西郷隆盛と会談し、江戸城無血開城を決め江戸の町を守った立役者として有名な人物です。そんな勝海舟はその後も働き続け当時では長寿にあたる75歳まで天寿を全うします。
幕末から明治の時代を忙しく駆け廻った海舟がなぜ、当時は平均寿命が38歳ほどであった時代を75歳まで生き続けることができたのでしょう。
明治維新後の勝海舟
明治維新後も勝海舟は新政府の要職に就きながら、旧幕臣の就労先の世話や資金援助などを続けていました。そんな海舟は自ら書を書き、それを旧幕臣たちに売らせ、それを彼らの生活費の足しにしていたそうです。そのなかで海舟が行っていた行動に長生きの秘訣があったと言われています。
海舟は知り合いと雑談をしながら書を書いていたそうです。実はこの「雑談する」「書を書く」という二つの作業を一緒にする「ながら作業」が、海舟が長生きをした秘訣ではないかといわれているそうです。
この二つの作業を一緒にやる「ながら作業」は、「デュアルタスク」と呼ばれ、脳を活き活きと元気に保つとされています。
脳を活性化させる「デュアルタスク」が長生きの秘訣?!
作業をするということは「体を動かす」という指令を送る脳の働きを活性化させます。その働きをさせながらある課題を達成するために考えることは、「思考」を司る前頭葉の働きも活性化します。「デュアルタスク」をするということは、このように脳の様々な部分を活性化させ認知機能を向上させるのです。
みなさんも是非この「デュアルタスク」をやってみてはいかがでしょうか。例えば、「歌を歌いながら料理をする」(最初は包丁を使わない料理がおすすめです。)とか、右手でグー・チョキ・パーを出しながら左手は右手に勝つようにグー・チョキ・パーを出すというのも「デュアルタスク」になります。じゃんけんに慣れてきたら、今度は、負けるようにグー・チョキ・パーを出してみて下さい。意外と負けるのは難しいですよ。
一人でやるのではなく家族や友人と一緒にやるのもオススメです。例えば、足踏みしながら数を順番に数えて3の倍数の時に手を叩くとか、ウォーキングしながらしりとりやクイズをするなどがあります。
このように「デュアルタスク」には色々な方法があります。
私は以前、外国から日本に来た子供たちの学習支援をするために近隣の小中学校を廻って補助員をしていた事があるのですが、ある学校では子供たちに九九を覚えてもらうためにウォーキングをしながら九九を暗唱するという「デュアルタスク」を実践していました。効果のほどは定かではないのですがとても良い試みだと思いました。子供たちも楽しそうにやっていました。
勝海舟が「デュアルタスク」は脳に良いと分かっていてわざとやっていたのかはわかりませんが、海舟はおしゃべりだったことを考えると、雑談しながら書を書くという「ながら作業」を日常的にやっていたのではないかと思います。もしそうだとしたら、自然とできてしまう勝海舟はやっぱりすごいですね。
おしゃべりは長生き?
因みにですが、勝海舟はとてもおしゃべり好きだったそうです。海舟の教えを受け、のちに「近世日本国民史」を著したことで知られる富徳蘇峰は海舟のことを最大限に称える一方で「惜しむらくはあまりにも多弁」とも書き残しています。
アメリカで発表された著書「長寿計画」によると、75歳以上の健康な高齢者を3年に渡って調査したところ、「親族または友人がいて、満足する接触が一週間に一度以上ある」など、人と会話する機会が多い人のほうが認知症に発症する可能性が低かったことがわかっています。
長生きした人がおしゃべり好きとは決して言えないかもしれませんが、少なくとも人と会って話すことは、長生きにいい影響を与えているかもしれませんね。