栄養不足と病気

栄養不足と病気
栄養には摂取不足による「栄養の欠乏症」と、栄養過多による「栄養の過剰症」が存在します。
今回は、栄養の欠乏症について学んでいきます。人間は栄養が不足するとどうなっていくのか。そして世界で暮らす人々の栄養状態はどうなっているのかを知りましょう。

日本の栄養摂取状況。

日本の栄養摂取状況
昔は欠乏症、現在は過剰症が問題
以前、栄養学の歴史の記事の中でも解説しましたが、我々日本人にとって戦後に大きな問題になったのが栄養の欠乏症です。戦時中から戦後にかけては食料が不足し、栄養失調になる人が続出しました。

経済の発展と共に食べものが豊かになった現在では、栄養失調などの栄養の「欠乏症」は無くなりました。しかし、逆に問題となっているのが栄養の「過剰症」です。

カロリーオーバーによる肥満は栄養の過剰摂取の典型です。また、栄養の過剰摂取によって高血圧、糖尿病などの生活習慣病が現在問題になっている。また、日本ではガンの発生率も高く、食事との因果関係が取り沙汰されています。

また、過剰症の一方で一部の栄養素が不足していというデータもありあます。例を出すと日本人に足りてない栄養素の一つが「カルシウム」です。カルシウムは骨を丈夫に保ち、血液中にも必要なミネラル成分です。日本人が食べているものにはカルシウムが少ない場合が多く、中高年の特に女性が骨粗鬆症になる例が多いです。

また、若い人達では「鉄分」の摂取不足が問題となっています。鉄分が不足してしまうと貧血になってしまうので、立っていられないなどの症状が出てしまいます。

高齢者は栄養不足に注意

高齢者と栄養
現在、日本では栄養の過剰症が問題視されていますが、高齢者においては栄養の欠乏が問題です。

高齢者は加齢にともなって食が細くなるため、栄養が不足する人が存在します。また、少食になることで食べる食事内容が偏り、栄養バランスが崩れてしまう事もあります。
栄養が不足したり、バランスが崩れると様々な影響が体に現れてしまいます。

次に栄養が不足してしまうと、どのような事が体に起こるのかをご紹介します。

栄養不足からくる体への影響

1.体重の減少
これは高齢者のみならず、あとで紹介する世界規模でも問題になっています。
我々の体は、食べた栄養素で構成されているため、当然、食べる量が少なくなれば体重は減ります。
体重は、いわば「人間のエネルギー貯蓄量」の目安になりますので、体重が著しく少なければ、エネルギーが少なく健康な生活を送ることができません。

2.免疫力の低下、病気になりやすくなる
栄養が欠乏してくると、体の免疫力が低下してきます。免疫力とは外敵である細菌やウイルスなどの「病気のもと」から体を守る、人間に備わった力の事です。
この免疫力は、栄養から作られるため、栄養が欠乏してしまうと免疫力を作り出すことができなくなってしまいます。
つまり、免疫力を上げたいならば栄養は必ず必要ということでもあります。

3.寝たきりになりやすくなる
日本の高齢者でいえば、寝たきりのリスクを高める原因のひとつが「骨折」です。
高齢者は骨折をしてしまうと、骨の治りが遅く、寝たきりになってしまう可能性が大きいので注意が必要です。特に高齢者の女性は閉経後、ホルモンバランスが崩れることから、骨がもろくなってしまうのです。

高齢者だけでなく、先にも紹介したとおり日本人は全体的に「カルシウム不足」に陥っているので、若い人も注意しなくてはなりません。

骨折を防止するためには、カルシウム摂取が絶対に必要になってきます。カルシウムを意識して摂取することで、骨が丈夫になって骨折を防ぐ事ができます。

世界の栄養の摂取状況

世界の栄養摂取状況を見ると、日本とは比べようもないほど栄養摂取は悲惨な状況です。

飢餓(きが)問題というのを聞いたことありませんか?飢餓とは長期間、食料を食べる事ができずに栄養不足に陥って、生存と生活が困難な状態をいいます。
国連WFPによれば、現在世界の7億9500万人近くの人が栄養不良に陥っているとされています。つまり、世界の9人に1人が十分な食料を得ることができない事になります。

一番の被害者は子供

栄養状態は国の経済状態や、土地の環境によって左右されます。欠乏症の多くの被害者は「子供」です。子供は発育の為に多くの栄養を必要とします。栄養が欠乏してしまうと身長が伸びない、知能が発達しないなどの影響が出てしまいます。また子供は大人とくらべて免疫力が整っていないので、栄養が足りてないと抵抗力が少なくなり、病気で命を落としてしまう子供も少なくありません。

世界でも栄養不良に陥っている子供達はアフリカに多いのが特徴です。特にサハラ地域より南の地域は「干ばつ」が頻繁に起こり、作物が育たない為食料危機が度々起こってしまいます。
また、アジアでも発展途上国や中国の一部でも慢性的な栄養不良に陥っている子供達が沢山います。

栄養の欠乏症からくる「栄養失調」とは
過度な栄養不良の状態が続くといわゆる「栄養失調症」になります。日本では戦後に問題になりましたが、世界では、現在も重度の栄養失調が問題視されており、栄養失調から死亡率が高まっています。
特に重度の栄養失調として「クワシオコール」と「マラスムス」という2種類があります。

クワシオコールとは

クワシオコール
クワシオコールとは「タンパク質」が極度に不足して起こる栄養失調です。
社会の授業で、お腹の出ている栄養失調の子供の写真など見たことはありませんか?あれこそがクワシオコールの症状で、腹部が膨張するのが特徴です。
タンパク質は筋肉や臓器など、体を作る主成分ですから過剰に不足すると筋肉の分解が進み、動けなくなってしまいます。また、免疫力も極端に下がるため病気になる確率が格段に上がります。

マラスムスとは

マラスムスとは
マラスムスは主にエネルギー不足が原因の栄養失調です。
クワシオコールのように腹部の膨張は見られませんが、体重の減少は顕著に現れます。

これらの栄養欠乏症は、すべて食料の不足から起こっています。WFP(World Food Programme)によれば、飢餓は解決可能な問題とされており、各国の援助や連携により、以前に比べれば、現在世界の飢餓人口は減少しています。過去10年間で1億6700万人、1990年代初頭には2億1600万人が減少しています。

しかし、それでもアフリカだけ見ればまだまだ多くの人が飢えに苦しんでいます。特に被害を受けているのは弱い立場の子供たちであるのです。

まとめ

・日本の栄養摂取は、昔は欠乏症、現在では過剰症が問題
・過剰症が問題視される中で、高齢者は栄養の欠乏傾向がある
・世界で問題となっているのは栄養の欠乏の方
・特に栄養の欠乏からくる「栄養失調」が多くの子供たちを苦しめている
・栄養失調は「クワシオコール」「マラスムス」という2種類がある
・以前に比べれば飢えで苦しむ人は減少している

世界では飢えに苦しむ子供たちが多くいることを知ると、日本に住んでいる私たちは何て幸せなんだろうと思います。日本では毎日多くの食べれる食材が捨てられています。私もですが、我々は毎日食事を食べられることにもっと感謝しなければいけませんね。