妊婦と葉酸サプリ

「妊婦なんだけど、葉酸サプリメントは飲んだほうがいいの?」

「これから妊活をはじめるのに、葉酸サプリメントは飲んだほうがいい?」

このページはそんな疑問をもつ人に向けて作成しています。

管理栄養士のタイゾーです。

妊婦の方から「葉酸サプリメントは飲んでいい?飲んだ方がいい?」という質問をよく受けます。

個人的には、葉酸サプリは飲んだほうが良いと思います。

しかし、妊婦や妊活をしている方の中には胎児への影響を心配する人もおり、「サプリメントは危険かしら?」と心配されている人も少なくありません。

そこでこのページでは栄養士の視点から、私が妊婦や妊活をしている方に葉酸サプリメントをオススメする理由について紹介していきます。


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そもそも『葉酸』とは何なのか?

まず葉酸がどのようなものかを解説しておきます。

葉酸という名前がついていますが、葉酸はビタミンB群の一種です。別名を『ビタミンM』ともいいます。

もう少し詳しく言えば、ビタミンCなどの水に溶ける性質のある『水溶性ビタミン』の一種になります。

ホウレン草の葉っぱから発見されたことから葉酸と言われるようになりました。

野菜など植物に広く含まれており、動物性食品では『レバー』によく含まれています。

葉酸は細胞やタンパク質を作る時にDNAなどの『核酸』を合成するために使われたり、酸素を全身に運ぶための『赤血球』を作る『造血作用』もする栄養素です。

妊婦が葉酸を摂るメリット

「妊婦や妊娠したい人は葉酸を摂ったほうが良いよ」なんて話を聞いたことがあるかもしれません。

でも「なぜ葉酸が必要なのか」を知らない人もいるでしょう。そこで妊婦が葉酸をとるメリットについて紹介します。

子供の先天性異常の予防になる

妊婦や妊娠したい人が葉酸を摂る最大のメリットとは『子供を先天性異常から守ること』です。

葉酸をとる事によって生まれてくる子供の『先天異常』を予防することにつながります。

まず先天異常というのは、具体的にいうと『神経管閉鎖障害』のことを指します。

神経管閉鎖障害は、お腹の中の胎児が『神経管』ができる4~5週目に起こる先天性の脳や脊髄の閉鎖不全のことです。

神経管閉鎖障害には『二分脊髄症』や『脳瘤(のうりゅう)』『脊髄瘤(せきずいりゅう)』『無脳症』といった種類があり、発症率は出生1万人に対して6人の割合となっています。※1

近年の研究によって、この神経管閉鎖障害を予防するために葉酸の摂取が有効であることが判明してきました。

葉酸と子供の先天異常予防に関する研究は、第二次大戦中のオランダの食糧難をきっかけに始まります。

当時、食糧難になったオランダでは二分脊髄症が増加したことを受けて、妊婦の栄養摂取が胎児の神経管の発達に大きく関わる可能性が示唆され、研究が始まりました。

その後、イギリスの臨床研究でこれまでに神経管閉鎖障害をもった子供を妊娠した経験のある女性に、妊娠前から妊娠12週まで葉酸を摂取させたところ、再発予防効果が72%あることがわかりました。

またこの研究結果を受けて、米国疾病予防センター(CDC)も妊娠前から1日に400μgの葉酸を摂取するよう推奨するようになりました。

妊婦や妊娠したい人に、葉酸サプリ利用が良い理由

サプリメントの中には「飲んでも意味がないのでは?」というものも少なからず存在しています。

しかし、妊婦が葉酸を摂取するために葉酸サプリを利用するのは賛成です。

次になぜ葉酸サプリを利用することが良いのか解説していきます。

葉酸サプリは、通常の食物よりも葉酸を吸収しやすい

妊婦や妊活をしている人には、葉酸を含むサプリメントの利用をオススメします。

先にも少し紹介しましたが、葉酸は野菜やレバーなど一般的な食物にも含まれています。
したがって葉酸サプリを摂らなくても、葉酸が多く含まれるブロッコリーや鶏レバーを食べれば摂取は可能です。

だからといって葉酸を食物から摂るのと、サプリメントで摂るのでは違いがあるのです。

その違いとは『吸収率』です。

葉酸を含むサプリと一般の食物では葉酸の吸収率が違ってきます。結論をいうと、葉酸サプリの方が葉酸の吸収率は高いのです。

具体的に説明すると、野菜などの食物に含まれている葉酸を『プテロイルポリグルタミン酸』といい、葉酸サプリに含まれる葉酸を『プテロイルモノグルタミン酸』といいます。

「葉酸なのに違いがあるの?」

と思う人もいるでしょうが、実は構造が違うのです。

葉酸サプリに含まれる『プテロイルモノグルタミン酸』の方が食物の葉酸に比べてカラダへの吸収率が高くなっています。

厚生労働省の資料によれば、食物の葉酸(プテロイルポリグルタミン酸)の吸収率は50%、サプリメントの葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)の吸収率は85% 2)

プテロイルポリグルタミン酸(食物に含まれる葉酸)は摂取すると、胃酸や酵素によって分解・消化され『プテロイルモノグルタミン酸』になってから吸収されます。

つまりプ食物の葉酸はプテロイルモノグルタミン酸に変換される必要があるわけです。またプテロイルポリグルタミン酸は加熱に弱く失活しやすいという特徴もあります。

野菜を室温で3日間保存しておくだけで、葉酸が70%も分解されてしまうのです。それだけでなく、調理中の水分に流れ出しやすい性質もあります。

したがって葉酸を食物から摂取しているようでも、実はあまりカラダに吸収できてなかったなんて事が起こりえるのです。

このような吸収率の違いを考えれば、妊婦が葉酸を摂取するには、葉酸サプリメントの利用が有効と言えるでしょう。

ちなみに、2017年1月には、医学雑誌JAMAにおいて米国予防医学専門委員会が、赤ちゃんの神経管閉鎖障害(二分脊椎症)を予防するために、妊娠の可能性がある全ての女性は1日に0.4~0.8mgの葉酸サプリメントを毎日摂取することを奨励する声明を発表しています。 3)

葉酸はどれくらい摂ればいい?

妊婦や妊娠したい方に葉酸が必要であることは先に解説した通りですが、どのくらいの葉酸を摂取すれば良いのか解説しておきます。

妊婦や妊娠を予定している人が葉酸を摂取する場合、

『少なくとも妊娠する1ヶ月前から妊娠後3ヶ月まで、1日に0.4mgの葉酸をサプリメントから摂取すると良いでしょう』

これは2000年に厚生労働省が作成した『神経管閉鎖障害のリスク低減に関する報告書』の内容にある勧告です。1)

この0.4mgは食事で摂取する葉酸量に上乗せした量です。つまり、食物とは別にサプリメントで0.4gの葉酸を摂ると良いということです。

また、ポイントとして『妊娠前から摂取しておく』『妊娠後3ヶ月(妊娠初期)まで摂取する』という事もおさえておきましょう。

※妊娠3ヶ月を過ぎても葉酸がカラダに必要な栄養素であることは変わりません。妊娠中期に突入しても主治医に相談しながら葉酸が不足しないようにしましょう。

1) 厚生省通知:自母第72号・健医地政第78号 神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
2) 厚生労働省資料:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4u.pdf
3) JAMA.2017;317:183-9


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