帯状疱疹の水疱

「背中の片側が、なんだかピリピリする」

「服が肌に触れるだけで、チクチクと痛む」

「虫に刺されたような赤いブツブツが出てきた」

こんな症状が現れたとき、皆さんはどうされますか?

「少し疲れているのかな」「年齢のせいかもしれない」と、しばらく様子を見る方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、その症状は帯状疱疹(たいじょうほうしん)という病気の始まりかもしれません。

帯状疱疹は、特に高齢者に多く、皮膚の症状が治った後も痛みが長く続くことがあります。

さらに注意したいのが、最初から特徴的な赤い発疹が出るとは限らないことです。

実は、皮膚に何も見えないうちから、ピリピリとした痛みや違和感が現れる場合があります。

今回は、帯状疱疹の見逃しやすい初期症状、早めの受診が大切な理由、そして2026年度の予防接種について、わかりやすくご紹介します。

この記事でわかること

  • 帯状疱疹の原因と、発疹が出る前に現れることがある初期症状
  • 皮膚の症状が治っても痛みが続く理由と、病院へ相談する目安
  • 2026年度の帯状疱疹ワクチンの対象年齢と、接種前に確認したいこと

帯状疱疹とは、どんな病気なの?

帯状疱疹の水疱

帯状疱疹は、体の左右どちらかに、帯のように赤い発疹や水ぶくれが現れることが多い病気です。

その原因は、子どものころなどにかかった「水ぼうそう」と同じウイルスです。

水ぼうそうが治った後も、原因となったウイルスは体の中から完全になくなるわけではありません。

神経の近くに長い間潜んでいて、何年も、場合によっては何十年もたってから、再び活動を始めることがあります。

このウイルスの再活動によって起こるのが、帯状疱疹です。

年齢を重ねることや、病気などによって免疫の働きが低下することが、発症の危険を高める要因になります。

つまり、昔、水ぼうそうにかかったことがある方は、何十年もたってから帯状疱疹を発症する可能性があるのです。

帯状疱疹は70代で発症する人が最も多い

厚生労働省によると、帯状疱疹は70代で発症する方が最も多くなっています。

年齢を重ねると、体を病原体から守る免疫の働きが変化していきます。

そのため、若いころには問題がなかった方でも、高齢になってから帯状疱疹を発症することがあります。

また、糖尿病などの病気がある方や、病気の治療によって免疫の働きが低下している方なども注意が必要です。

もちろん、帯状疱疹は高齢者だけの病気ではありません。若い方でも発症することがあります。

ただし、高齢者では発症後の痛みが長引きやすいため、特に知っておいていただきたい病気の一つです。

最初は発疹が出ない?見逃しやすい初期症状

帯状疱疹と聞くと、赤い発疹や水ぶくれを思い浮かべる方が多いかもしれません。

ところが、実際には発疹が現れる数日前から、痛みや違和感が始まることがあります。

代表的なのは、次のような症状です。

  • 体の片側がピリピリ、チクチクと痛む
  • 肌が焼けるようにヒリヒリする
  • 服が触れただけでも痛く感じる
  • 皮膚の一部分がむずむずする、かゆくなる
  • 背中や胸、お腹などの一部分に違和感がある

これらは、ウイルスの再活動によって神経に炎症が起こることなどが関係しています。

その後、痛みのある場所に赤い発疹が現れ、小さな水ぶくれができることがあります。

ただし、症状の出方には個人差があります。痛みが目立たない方もいれば、発疹より痛みが強く出る方もいます。

また、皮膚の痛みには、帯状疱疹以外にもさまざまな原因があります。

痛みだけで帯状疱疹と決めつけず、気になる症状がある場合はすぐに医療機関に相談しましょう。

体の「片側だけ」に症状が出やすいのが特徴

帯状に広がる

帯状疱疹には、覚えておきたい特徴があります。

それは、体の左右どちらか片側に症状が現れることが多いという点です。

たとえば、右の胸から背中にかけて痛みが出たり、左のお腹の一部分に赤い発疹が並んだりすることがあります。

これは、ウイルスが神経に沿って活動するためです。

神経の通り道に沿って、帯のように発疹が広がることから「帯状疱疹」という名前が付いています。

ただし、必ずしもきれいな帯状になるわけではありません。免疫の働きが大きく低下している場合などには、広い範囲に発疹が現れることもあります。

また、胸や背中だけでなく、顔、頭、首、腕、脚などに現れることもあります。

特に怖いのは「皮膚が治った後も続く痛み」

帯状疱疹で特に注意したいのが、皮膚の症状が治った後にも痛みが残ることです。

これを帯状疱疹後神経痛といいます。

少し難しい名前ですが、簡単にいうと、帯状疱疹によって傷ついた神経が原因で、長期間痛みが続く状態です。

皮膚の発疹や水ぶくれが治っても、神経の痛みがすぐに消えるとは限りません。

米国疾病対策センター(CDC)によると、帯状疱疹を発症した方の約10~18%に、帯状疱疹後神経痛が生じるとされています。

また、この痛みが残る危険性は、年齢が高くなるほど増える傾向があります。

痛みは数か月、ときにはそれ以上続くこともあり、睡眠や日常生活に影響する場合があります。

「皮膚がきれいになったから、もう大丈夫」とは限らないのです。

なぜ早めに病院へ行くことが大切なの?

帯状疱疹の治療では、ウイルスの増殖を抑える薬が使われます。

こうした薬は、できるだけ早い時期に使い始めることが重要です。

一般的に、発疹が現れてから72時間以内に治療を開始すると、効果が得られやすいとされています。

72時間とは、3日間のことです。

ただし、3日を過ぎたら治療できないという意味ではありません。

発疹が広がっている場合や、症状が強い場合などには、その後でも治療が必要になることがあります。

そのため、帯状疱疹が疑われる発疹や痛みがある場合は、できるだけ早く皮膚科などを受診することが大切です。

特に高齢者では、痛みを我慢して受診を遅らせないようにしましょう。

なお、早く治療を始めても、必ず帯状疱疹後神経痛を防げるわけではありません。治療の効果や経過には個人差があります。

顔や目の周りに症状が出たら、特に注意してください

帯状疱疹は、体のどこに発症するかによって注意点が異なります。

特に、額、まぶた、鼻の周囲などに発疹が現れた場合は、目に影響が及ぶことがあります。

角膜などに炎症が起こり、視力に問題が生じる場合もあるためです。

目の周囲に発疹がある場合や、目の痛み、充血、見えにくさなどを伴う場合は、速やかに医療機関へ相談してください。眼科での診察が必要になることもあります。

また、耳の周囲に症状が現れ、聞こえにくさ、めまい、顔の動かしにくさなどを伴う場合も、早急な診察が必要です。

なお、突然の顔のまひや言葉のもつれ、手足の脱力などが現れた場合は、帯状疱疹と決めつけず、脳卒中などの可能性も考えて119番に連絡してください。

帯状疱疹は家族にうつるのでしょうか?

ここで、よくある疑問についてもお話しします。

帯状疱疹は、一般的な風邪のように、人から人へそのまま「帯状疱疹」としてうつる病気ではありません。

しかし、原因となるウイルスは、ほかの人に感染する可能性があります。

たとえば、水ぼうそうにかかったことがなく、予防接種などによる免疫もない人が、帯状疱疹の水ぶくれに含まれるウイルスに接触すると、水ぼうそうを発症する場合があります。

そのため、水ぶくれがある間は、発疹を清潔な衣類や適切なガーゼなどで覆い、手洗いを心がけましょう。

また、すべての水ぶくれがかさぶたになるまでは、水ぼうそうへの免疫がない妊婦、新生児、免疫の働きが低下している方などとの接触に注意が必要です。

感染対策については、医師の指示に従ってください。

帯状疱疹は予防できる?2025年度から定期接種が始まりました

帯状疱疹には、発症や合併症を予防するためのワクチンがあります。

2025年4月から、65歳の方などを対象に、予防接種法に基づく定期接種が始まりました。

定期接種とは、国が対象者や接種方法などを定め、市区町村が実施する予防接種のことです。

対象者は、市区町村が定める自己負担額で接種を受けられる場合があります。

ただし、定期接種だからといって、全国どこでも無料というわけではありません。

自己負担額や接種できる医療機関などは、自治体によって異なります。

2026年度の定期接種は何歳が対象?

2026年度は、原則としてその年度中に次の年齢になる方が定期接種の対象です。

  • 65歳になる方
  • 70歳になる方
  • 75歳になる方
  • 80歳になる方
  • 85歳になる方
  • 90歳になる方
  • 95歳になる方
  • 100歳になる方

2025年度から2029年度までの5年間は、65歳を超える方にも段階的に接種の機会を設ける経過措置が実施されています。

また、60歳以上65歳未満で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能の障害があり、日常生活がほとんど不可能な方も対象になります。

注意していただきたいのは、年齢の判定です。

2026年度の対象年齢は、2026年4月1日から2027年3月31日までの年度中に迎える年齢で判断します。

たとえば、現在69歳でも、2027年3月31日までに70歳になる方は、2026年度の対象に該当する場合があります。

一方、現在70歳であっても、2026年度中に71歳になる方は、年齢による定期接種の対象ではありません。

また、過去に帯状疱疹ワクチンを接種したことがある方については、原則として定期接種の対象外ですが、医師が必要と判断した場合などに例外があります。

ご自身が対象になるかどうかは、自治体の案内や生年月日を確認してください。

2026年度の接種期間は2027年3月31日まで

2026年度の定期接種期間は、2026年4月1日から2027年3月31日までです。

対象年齢に該当する方でも、期間を過ぎると定期接種として受けられなくなる場合があります。

また、ワクチンの種類によっては2回の接種が必要です。

そのため、年度末ぎりぎりになってから相談すると、2回目の接種が期間内に間に合わない可能性があります。

接種を希望する方は、早めにお住まいの自治体や医療機関へ確認しましょう。

帯状疱疹ワクチンには2種類あります

現在、定期接種で使われる帯状疱疹ワクチンには、大きく分けて2種類あります。

① 生ワクチン

生ワクチンは、病原性を弱めたウイルスを利用するワクチンです。

接種回数は1回です。

ただし、病気や治療によって免疫の働きが低下している方は、接種できない場合があります。

② 組換えワクチン

組換えワクチンは、ウイルスの一部の成分を利用して免疫の働きを高めるワクチンです。

通常は2か月以上の間隔を空けて、2回接種します。

病気や治療によって免疫の働きが低下している方などでは、医師の判断によって接種間隔を短縮できる場合があります。

厚生労働省によると、帯状疱疹に対する接種後1年時点の予防効果は、生ワクチンで6割程度、組換えワクチンで9割以上とされています。

ただし、どちらのワクチンも、発症を100%防げるわけではありません。

また、接種後には注射した部分の痛みや赤み、発熱、疲労感などの副反応が現れることがあります。まれですが、重い副反応が起こる可能性もあります。

ワクチンにはそれぞれ特徴がありますので、効果だけでなく、接種回数、副反応、持病、費用なども考慮し、医師と相談して選びましょう。

ワクチン接種を考えるときの3つの確認事項

1.自分が定期接種の対象か確認する

まずは、生年月日とお住まいの自治体の案内を確認しましょう。

自治体から接種券や案内が届いている場合は、内容をよく読んでください。

案内が届いていなくても、対象になる場合がありますので、不明な点は自治体の予防接種担当窓口に確認しましょう。

2.持病や服用している薬について相談する

特に免疫の働きに影響する病気や治療を受けている方は、接種できるワクチンの種類に注意が必要です。

また、過去に予防接種で強いアレルギー反応を起こしたことがある方なども、事前に医師へ相談してください。

3.費用と接種日程を確認する

自治体によって自己負担額が異なるため、予約前に確認しましょう。

2回接種するワクチンを希望する場合は、2回目までの間隔を考えて予定を立てることが大切です。

2026年度の定期接種を希望する方は、年度内に必要な接種を終えられるか、医療機関へ早めに相談してください。

一度、帯状疱疹になった人はもう大丈夫?

「昔、帯状疱疹になったことがあるから、もうかからないでしょう?」

そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、帯状疱疹は一度かかった人でも、再び発症することがあります。

そのため、過去に帯状疱疹を経験したことがある方でも、予防接種について相談する意味があります。

ただし、現在帯状疱疹を発症している場合は、予防接種によってその病気を治療することはできません。

接種する時期については、症状の回復状況などを踏まえて医師と相談しましょう。

普段の生活で気をつけたいこと

帯状疱疹は、年齢や免疫の働きなどが関係する病気です。

そのため、特定の食べ物を食べたり、生活習慣を一つ変えたりするだけで、確実に発症を防げるわけではありません。

ただし、毎日の健康管理は大切です。

睡眠を十分にとり、無理のない範囲で体を動かし、食事を偏らせないようにすることは、健康を維持するための基本になります。

また、持病がある方は、日ごろから適切な健康管理を続けましょう。

そして、体の片側に原因のわからない痛みや発疹が現れた場合には、無理をせず、早めに医療機関へ相談することが大切です。

こんな症状があれば病院へ相談しましょう

最後に、帯状疱疹を疑ったときの受診の目安をまとめます。

  • 体の左右どちらかに、ピリピリとした痛みが続く
  • 痛みのある場所に赤い発疹や水ぶくれが出てきた
  • 服が触れるだけでも強く痛む
  • 皮膚の症状が治った後も痛みが続いている
  • 顔や目、耳の周囲に痛みや発疹がある
  • 発疹が広い範囲に現れたり、発熱など全身の症状を伴ったりする

特に顔や目の周囲に症状がある場合、視力や聴力の異常を伴う場合、免疫の働きが大きく低下している場合は、速やかな診察が必要です。

また、胸の強い痛みや息苦しさ、意識の異常などがある場合は、帯状疱疹以外の重大な病気の可能性もあるため、救急受診を検討してください。

まとめ|帯状疱疹は「早く気づくこと」が大切

今回は、高齢者に多い帯状疱疹についてご紹介しました。

帯状疱疹は、水ぼうそうの原因となるウイルスが、長い年月を経て再び活動することで発症する病気です。

特徴的な赤い発疹や水ぶくれが出る前から、皮膚の片側に痛みや違和感が現れることがあります。

また、皮膚の症状が治った後にも、神経の痛みが長く続く場合があります。

そのため、気になる症状が現れたら、できるだけ早く医療機関へ相談することが大切です。

さらに、2025年度からは高齢者を対象とした帯状疱疹ワクチンの定期接種も始まっています。

2026年度に対象となる年齢の方は、2027年3月31日までの接種期間や、自治体の費用負担制度について確認してみましょう。

年齢を重ねると、体にさまざまな変化が現れます。

しかし、すべての痛みや不調を「年齢のせい」と考える必要はありません。

「いつもと違う痛み」に気づいたら、我慢せず早めに相談すること。

その心がけが、帯状疱疹によるつらい症状や、その後の生活への影響を小さくすることにつながるかもしれません。

参考文献・情報源

  1. 厚生労働省「帯状疱疹ワクチン」2025年度開始の定期接種制度、ワクチンの効果・安全性・接種対象者に関する公式情報。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/shingles/
  2. 東京都保健医療局「帯状疱疹ワクチンについて」2026年6月15日更新。
    https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/info/taijouhoushin/taijouhoushin
  3. 上田市「高齢者の帯状疱疹ワクチン」2026年9月25日更新。2026年度の対象年齢・生年月日について。
    https://www.city.ueda.nagano.jp/soshiki/kenko/108848.html
  4. 日本皮膚科学会雑誌「帯状疱疹診療における課題―帯状疱疹診療ガイドライン2025より」2026年3月20日発行、第136巻第3号、221~225頁。
    https://doi.org/10.14924/dermatol.136.221
  5. 米国疾病対策センター(CDC)「Shingles Symptoms and Complications」2024年4月19日更新。
    https://www.cdc.gov/shingles/signs-symptoms/index.html
  6. 米国疾病対策センター(CDC)「Clinical Overview of Shingles (Herpes Zoster)」2024年公表。
    https://www.cdc.gov/shingles/hcp/clinical-overview/index.html