「健康診断で脂肪肝と言われたけれど、どこも痛くないから大丈夫かな」
「お酒はほとんど飲まないのに、どうして脂肪肝になるの?」
「脂肪肝を減らすには、ご飯を食べないほうがいいの?」
このように思っている方は、とても多いと思います。
脂肪肝は、名前のとおり「肝臓の中に脂肪がたまりすぎた状態」です。
昔は「お酒をよく飲む人の病気」という印象が強かったのですが、現在は、お酒をほとんど飲まない方でも、内臓脂肪、血糖値、食生活、運動不足、筋肉量の低下などが関係して脂肪肝になることが分かっています。
特に70代以降の女性では、脂肪肝を改善したいからといって「とにかく食べる量を減らす」という方法には注意が必要です。
なぜなら、高齢になると脂肪だけではなく筋肉まで落ちやすく、食事を減らしすぎることで、フレイルやサルコペニア、転倒、体力低下につながる可能性があるからです。
ですから、70代からの脂肪肝対策で目指したいのは、
「ただ痩せること」ではありません。
余分な肝臓の脂肪や内臓脂肪は減らしながら、必要な栄養と筋肉はきちんと守る。
これがとても大切です。
この記事では、日本消化器病学会「MASLD診療ガイドライン2026」、日本肝臓学会、厚生労働省、国内の疫学研究、海外の主要診療ガイドラインなどをもとに、脂肪肝を防ぐ・減らすために知っておきたいことを、できるだけやさしくお話しします。
まず結論|脂肪肝対策で大切なこと

先に結論をお伝えします。
脂肪肝を防いだり、肝臓にたまった脂肪を減らしたりするために、科学的根拠が比較的しっかりしているのは、生活習慣の改善です。
毎日の食事、運動、体重、筋肉、飲酒習慣を少しずつ整えることです。
- 太り気味の人は、筋肉を守りながら少しずつ体重を減らす
- ジュース、甘い飲み物、砂糖の多い食品を減らす
- 野菜、豆類、魚、大豆、全粒穀物などを増やす
- 加工食品、菓子類、脂身の多い肉、飽和脂肪を摂りすぎない
- 可能なら中強度の身体活動を週150分以上行う
- 筋力トレーニングを週2~3日取り入れる
- 長時間の座りっぱなしを減らす
- お酒を飲む方は量を見直す
- 70代以降では、食事制限で筋肉と栄養まで落とさない
全部を一度に始める必要はありません。
「今より一つだけ良くする」くらいから始めて、それを長く続けるほうが大切です。
脂肪肝とは何か、どうやって分かるのか
脂肪肝とは、簡単にいうと肝臓の細胞の中に中性脂肪などが必要以上にたまっている状態です。
肝臓は、食べた糖や脂肪を処理したり、エネルギーを蓄えたり、アルコールや薬物などを分解したりする、いわば「体の大きな化学工場」です。
ところが、
- 食事から入るエネルギーが多い
- 内臓脂肪が増えている
- 血糖を処理しにくくなっている
- 運動量が少ない
- お酒を多く飲む
といった状態が重なると、肝臓に入ってくる脂肪や、肝臓の中で作られる脂肪が増え、処理しきれなくなります。
その結果、肝臓の中に脂肪がたまっていくのです。
現在、お酒以外の代謝異常と深く関係する脂肪性肝疾患は、従来の「NAFLD」という名称から、MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)という名称へ変更されています。
日本肝臓学会が2026年2月に示した国内の診断基準では、肝臓に脂肪があることに加えて、次のような心代謝系の危険因子の少なくとも一つを持つことがMASLDの判断に関係します。
- BMIが23kg/m²以上、または一定以上の腹囲
- 空腹時血糖100mg/dL以上、HbA1c 5.7%以上などの耐糖能異常・糖尿病
- 血圧130/85mmHg以上、または降圧薬を使用している
- 中性脂肪150mg/dL以上、または脂質異常症の治療中
- HDLコレステロールが低い、または脂質異常症の治療中
検査にはそれぞれ役割と限界があります

「健康診断のASTとALTが正常だったから、脂肪肝ではない」
これは必ずしも正しくありません。
ASTやALTが正常でも脂肪肝がある人はいますし、線維化が進んでいても肝酵素が正常な場合があります。
そのため、脂肪肝は一つの血液検査だけで判断するものではありません。
| 検査 | 何が分かる? | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 腹部超音波検査(エコー) | 肝臓に脂肪がたまっている可能性を画像で調べます。脂肪肝の発見に広く使われています。 | 軽い脂肪肝は見逃されることがあります。検査する人や体格による影響も受けます。 |
| CT | 肝臓の脂肪を画像から推測できます。別の目的で行ったCTで偶然脂肪肝が見つかることもあります。 | 放射線被ばくがあるため、脂肪肝だけを調べる目的で繰り返す検査には向きません。軽度の脂肪は評価しにくい場合があります。 |
| MRI・MRI-PDFF | 肝臓の脂肪量をより定量的に評価できます。 | 精度は高い一方、費用や設備の問題があり、全員が日常的に受ける検査ではありません。 |
| AST・ALTなどの血液検査 | 肝細胞が傷ついている可能性を調べる手がかりになります。 | 正常値でも脂肪肝や進行した線維化を完全には否定できません。 |
| FIB-4 index | 年齢、AST、ALT、血小板数から、進行した肝線維化の可能性を推測します。 | 脂肪肝そのものを診断する検査ではありません。また、高齢者では年齢だけでも値が高くなりやすいため、自己判断は禁物です。 |
| 肝硬度測定・エラストグラフィ | 肝臓の硬さを測り、線維化の程度を推測します。 | 測定条件、肥満などの影響を受けることがあります。他の検査と組み合わせて判断します。 |
FIB-4は、
年齢 × AST ÷(血小板数 × √ALT)
で計算される指標です。
ただし、70代以上の方では非常に重要な注意があります。
FIB-4には「年齢」が直接入るため、高齢であるというだけで数字が上がりやすいのです。
欧州のMASLDガイドラインでも、65歳を超える人では一般成人とは異なる解釈が必要とされています。
ですから、インターネットでFIB-4を計算して、
「高かった。もう肝硬変なのでは?」
と自己判断する必要はありません。
FIB-4はあくまで「さらに詳しく調べたほうがよい人を選ぶための道具」です。
参考:EASL-EASD-EASO MASLD Clinical Practice Guidelines 2024
60代・70代女性ではどれくらい多い?脂肪肝を放置してはいけない理由

では、日本の60歳以上では、どのくらいの人に脂肪肝があるのでしょうか。
ここは、数字の伝え方に少し注意が必要です。
現在、「日本全国の60歳以上すべてを無作為に調べた、最新の超音波による全国代表値」があるわけではありません。
そのため「日本の70代女性のちょうど○%が脂肪肝」と断定するのは正確ではありません。
一方、日本の大規模な健診データを長期間調べた研究があります。
2008~2019年に30~79歳の健診受診者48,332人を調べ、腹部超音波で脂肪肝を評価した国内研究では、2019年時点で女性の脂肪肝は、
- 60代女性:26.6% → 約4人に1人
- 70代女性:30.1% → 約3人に1人
でした。
ただし、この研究は全国民から無作為抽出した調査ではなく、健診施設を受診した人を対象とした研究です。また、70代の人数は若い年代より少ないという限界があります。
ですから、高齢女性向けの記事では、
「国内の大規模健診研究では、60代女性で約4人に1人、70代女性で約3人に1人。60歳以上では“3~4人に1人規模”という報告がある」
と表現するのが、誤解の少ない言い方です。
つまり、脂肪肝は決して珍しいものではありません。
そして特に女性では、閉経後はMASLDの線維化が進みやすいグループの一つとされています。
「でも脂肪が少したまっているだけでしょう?」
と思う方もいるでしょう。
確かに、脂肪肝になったすべての人が重い肝臓病になるわけではありません。
ここは必要以上に怖がる必要はありません。
しかし一部の人では、
脂肪の蓄積 → 炎症 → 線維化 → 肝硬変
と進行します。
そして、肝硬変まで進むと肝不全や肝がんなどのリスクが高くなります。
特に重要なのは「線維化」です。
肝臓に脂肪があるかどうかだけでなく、肝臓にどれだけ“傷あと”ができ、硬くなっているかが、将来の肝臓の予後を考えるうえで非常に重要です。
timeline
title 脂肪肝が進行する場合の流れ
脂肪の蓄積 : 肝細胞に中性脂肪がたまる
脂肪肝 : 多くは自覚症状がほとんどない
MASH : 一部の人で炎症と肝細胞障害が起こる
線維化 : 肝臓に傷あとが増えていく
肝硬変 : 肝臓が硬くなり機能が低下する
肝がんなど : 肝臓関連の合併症リスクが高くなる
※すべての脂肪肝がこの順序で進行するわけではありません。生活習慣の改善などにより、肝脂肪が減る人もいます。
さらに、脂肪肝は「肝臓だけの問題」ではありません。
MASLDは、肥満、内臓脂肪、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症などと深く結びついており、心血管疾患のリスクが高い集団でもあります。
海外の主要ガイドラインでは、MASLDがある人では非致死性の心血管疾患、冠動脈疾患、心不全、慢性腎臓病などが多いことがまとめられています。
ただし、
「脂肪肝だけが心筋梗塞を起こしている」
という単純な話ではありません。
内臓脂肪、インスリン抵抗性、糖尿病、高血圧など、脂肪肝と心血管疾患に共通する危険因子も大きく関係します。
ですから脂肪肝は、
「肝臓から届いた、体全体の代謝を見直すサイン」
と考えると分かりやすいでしょう。
参考:EASL-EASD-EASO MASLD Clinical Practice Guidelines
なぜ脂肪肝になるの?体の中で起きていること

脂肪肝は「脂っこい物を食べたから、その油がそのまま肝臓についた」という単純な病気ではありません。
糖、脂肪、インスリン、内臓脂肪、筋肉、運動、アルコールなどが複雑に関係して起こります。
まず、食事から得るエネルギーが長期間、体で使うエネルギーを上回ると、余ったエネルギーは脂肪として蓄えられます。
皮膚の下だけでなく、お腹の内臓の周囲や肝臓にも脂肪がたまりやすくなります。
そして大きな鍵になるのが、「インスリン抵抗性」です。
インスリンは、血液の中にあるブドウ糖を筋肉などへ取り込ませ、血糖値を調節するホルモンです。
ところが内臓脂肪が増えたり、運動不足になったりすると、インスリンが効きにくくなることがあります。
すると脂肪組織から遊離脂肪酸が放出されやすくなり、その脂肪酸が肝臓へ運ばれます。
さらに血糖やインスリンが高い状態が続くと、肝臓の中で糖から新しい脂肪を作る「de novo lipogenesis(新生脂肪合成)」も増えやすくなります。
つまり肝臓では、
- 外から脂肪がたくさん入ってくる
- 肝臓自身でも脂肪を作る
- 脂肪を十分に燃やせない
- 脂肪を外へ出す能力を上回る
ということが重なり、脂肪がたまっていきます。
特に内臓脂肪は重要です。
「体重はそれほど重くないけれど、お腹だけ出てきた」
という方でも脂肪肝になることがあります。
そのため、
「太っていない=脂肪肝にならない」ではありません。
日本人を含むアジア人では、欧米人ほどBMIが高くなくても代謝異常が起こることがあります。
そして70代以降では、もう一つ意識したいのが筋肉量と活動量の低下です。
筋肉は、体を動かすためだけのものではありません。
食事から入ってきた糖を取り込んで使ってくれる、体の中でも非常に大きな組織です。
高齢になって、
- 外出が減った
- 歩く距離が短くなった
- 座っている時間が増えた
- 筋肉量が減った
という状態になると、糖を使う機会が減り、インスリン抵抗性や代謝異常を悪化させる一因になります。
サルコペニアと脂肪肝には関連が報告されていますが、「筋肉が少ないことだけが脂肪肝の原因」と単純に断定できるわけではありません。
むしろ、
脂肪が増える → 動きにくくなる → 筋肉が減る → 糖を処理しにくくなる → さらに代謝状態が悪くなる
という相互作用を考えるほうが実際に近いでしょう。
お酒を飲むと、なぜ脂肪肝になるの?
ここは少しだけ、体の中の「化学」のお話をします。
でも難しく考えなくて大丈夫です。
飲んだアルコールの多くは肝臓で、
アルコール → アセトアルデヒド → 酢酸
という順番で代謝されます。
最初はアルコール脱水素酵素、次にアルデヒド脱水素酵素などが働きます。
この反応の際、NAD+という物質がNADHへ変わります。
お酒を多く飲むと、肝臓の中でNADHが増え、NADH/NAD+比が高い状態になります。
すると肝臓は、脂肪酸を燃やす「β酸化」を行いにくい代謝状態になります。
反対に、中性脂肪を作って蓄える方向に傾きやすくなります。
とても簡単に言えば、
お酒を飲む → 肝臓がアルコール処理を優先する → 脂肪が燃えにくくなる → 中性脂肪が肝臓にたまりやすくなる
ということです。
さらにアルコール代謝で作られるアセトアルデヒドや活性酸素は、ミトコンドリアなどに負担を与え、炎症や肝障害にも関係します。
そして、アルコールそのものにも1gあたり約7kcalのエネルギーがあります。
ですから、
「糖質ゼロのお酒なら脂肪肝にならない」わけではありません。
糖質がゼロでも、アルコールはアルコールです。
また現在の脂肪性肝疾患の考え方では、「アルコール」と「代謝異常」は完全に別々のものではなく、両方が一緒に肝臓へ影響することも重視されています。
参考:日本肝臓学会・脂肪性肝疾患の診断基準、
Alcohol and Acetaldehyde in Public Health
科学的根拠が強い生活習慣|食事と運動をどう変える?

ここからが一番大切なところです。
脂肪肝対策について、科学的根拠が比較的強いのは、やはり生活習慣の改善です。
2026年の日本のMASLD診療ガイドラインでは、生活習慣改善として食事と身体活動・運動が中心に置かれています。
体重については、ガイドラインの公開資料で、
- BMI 25kg/m²未満:体重3~5%減で肝脂肪化の改善
- BMI 25kg/m²以上:5%以上の減量で肝脂肪化の改善
- BMI 25kg/m²以上:7%以上の減量で炎症・肝線維化の改善
が目標として示されています。
出典:日本消化器病学会「MASLD診療ガイドライン2026」Annual Review公開資料
例えば体重60kgの人なら、
- 3%=約1.8kg
- 5%=約3kg
- 7%=約4.2kg
です。
つまり、必要な方では何十kgも落とさなくても、数%程度の減量が肝臓に意味を持つ可能性があります。
ただし、これは70代以上の方にとって非常に重要な注意点があります。
「脂肪肝なら全員痩せるべき」という意味ではありません。
もともと痩せている方、食欲が低下している方、最近勝手に体重が減っている方、筋力が落ちている方に、自己流の減量を勧めるべきではありません。
高齢者では体重だけではなく、筋肉・骨・体力・栄養状態を同時に守る必要があります。
食事では、欧州のMASLD診療ガイドラインが、
- 地中海食に近い質の高い食事
- 砂糖や飽和脂肪の多い超加工食品を減らす
- 砂糖入り飲料を避ける
ことを強く推奨しています。
「地中海食」と聞くと、
「毎日パスタとオリーブオイルを食べるの?」
と思うかもしれません。
そうではありません。
大切なのは料理名ではなく、食事全体の形です。
地中海食の特徴は、
- 野菜が多い
- 豆類をよく食べる
- 魚を食べる
- 全粒穀物を取り入れる
- 果物を適量食べる
- ナッツや不飽和脂肪酸を適量利用する
- 赤身肉や加工肉、砂糖、精製された炭水化物を摂りすぎない
というものです。
日本の食卓なら、
「魚・大豆・野菜・きのこ・海藻・麦などを上手に使った和食」
に置き換えて考えることができます。
ただし、昔ながらの和食には、みそ汁、漬物、干物、しょうゆなどで塩分が多くなりやすいという弱点もあります。
高血圧がある方は、「和食だから何でも健康」ではなく、薄味も意識するとよいでしょう。
脂肪肝対策で、まず優先的に減らしたいのが甘い飲み物です。
- 清涼飲料水
- 甘い炭酸飲料
- 砂糖入り缶コーヒー
- 甘い紅茶
- スポーツドリンク
- 乳酸菌飲料
- 果汁飲料
などを毎日のように飲んでいる場合は、見直す価値があります。
水、麦茶、緑茶、無糖のコーヒー・紅茶などへ置き換えるだけでも、余分な糖とエネルギーをかなり減らせる場合があります。
「何を食べるか」だけでなく、「何を飲むか」も脂肪肝では大切です。
参考:EASL-EASD-EASO MASLD Clinical Practice Guidelines 2024
ここで、
「それなら果物も糖だから食べないほうがいいの?」
と思うかもしれません。
果物そのものと、砂糖入り飲料を同じものとして考える必要はありません。
果物には水分、食物繊維、ビタミン、ミネラルなども含まれます。
問題になりやすいのは、砂糖を加えた飲み物や、短時間で大量に摂りやすい糖です。
ですから、
果物は「適量を食べる」。ジュースは「飲み物だからと大量に飲まない」。
と覚えると分かりやすいでしょう。
ご飯についても同じです。
脂肪肝だからといって、ご飯を完全に抜く必要はありません。
特に70代、80代で食事量がもともと少ない方が、極端な糖質制限をすると、必要なエネルギーまで不足する可能性があります。
大盛りを普通盛りにする。
白米の一部を麦ごはんにする。
菓子パンを毎日食べているなら回数を減らす。
このような「量と質の見直し」のほうが実践的です。
そして70代以上の女性では、たんぱく質を減らしすぎないことが非常に重要です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、女性のたんぱく質推奨量は、
- 65~74歳:1日50g
- 75歳以上:1日50g
とされています。
また、65歳以上では、たんぱく質の目標量として総エネルギーの15~20%が示されています。
ここで注意してください。
「たんぱく質50g」=「肉を50g食べればいい」という意味ではありません。
食品の重さではなく、食品の中に含まれる「たんぱく質そのもの」の量が約50gという意味です。
食品によってたんぱく質量は違います。
| 食品 | 1回分の目安 | たんぱく質の目安 | 取り入れ方 |
|---|---|---|---|
| 魚 | 1切れ 70~80g程度 | 約15~18g前後 | サバ、鮭、イワシ、アジなど。肉が続く日の置き換えに。 |
| 鶏肉 | 70~80g程度 | 約15~20g前後 | 脂身や皮を摂りすぎないようにし、蒸す・焼く・煮るなどに。 |
| 卵 | 1個 | 約6g | 朝食にたんぱく質が少ない方が追加しやすい食品。 |
| 納豆 | 1パック 40~50g程度 | 約6~8g | ご飯だけの朝食になりやすい方に便利。 |
| 木綿豆腐 | 100g程度 | 約7g前後 | 冷ややっこ、湯豆腐、みそ汁などに。 |
| 牛乳 | 200mL | 約6~7g | 食事量が少ない方の栄養補給にも使いやすい。 |
| 無糖ヨーグルト | 100g | 約3~4g | 間食や朝食に。砂糖の多い製品は食べすぎに注意。 |
※たんぱく質量は食品の種類、製品、部位、調理方法によって変わるため、おおよその目安です。詳しい数値は文部科学省「食品成分データベース」などで確認できます。
例えば、
- 朝:卵+納豆
- 昼:豆腐または魚
- 夜:魚や鶏肉
というように、一日の最後にまとめて食べるのではなく、3食に分けると50g程度を確保しやすくなります。
ただし、腎臓病などでたんぱく質制限を指示されている方は、この数字を自己判断で使わず、主治医や管理栄養士から受けている指示を優先してください。
脂肪肝対策に取り入れやすい食品をまとめると、次のようになります。
- 魚:サバ、イワシ、アジ、鮭など
- 大豆食品:納豆、豆腐、おから、大豆
- 野菜:葉物、ブロッコリー、トマト、キャベツ、にんじんなど
- きのこ:しいたけ、しめじ、まいたけ、えのきなど
- 海藻:わかめ、のり、ひじきなど
- 食物繊維の多い主食:麦ごはん、玄米、雑穀、全粒粉食品など
- 果物:みかん、りんご、キウイ、いちごなどを適量
- 乳製品:無糖ヨーグルト、牛乳など
- ナッツ:無塩のくるみ、アーモンドなどを少量
- 油:オリーブ油、なたね油などを適量
ここで大事なのは、「体に良い食品なら、たくさん食べるほど良い」という意味ではないことです。
ナッツやオリーブ油は不飽和脂肪酸を含みますが、エネルギーの高い食品でもあります。
少量を「置き換え」として利用するのが基本です。
また、歯や飲み込みに不安がある高齢者では、硬いナッツを無理に食べる必要はありません。
反対に、「毎日食べる習慣」があるなら少し減らしたいのは、
- 砂糖入り飲料
- 菓子パン
- ケーキやクッキーなどの菓子
- アイスクリーム
- 脂身の多い肉
- ハム、ソーセージなどの加工肉
- 揚げ物
- ファストフード
- 砂糖や飽和脂肪の多い超加工食品
などです。
一生禁止にする必要はありません。
毎日なら週数回へ、量が多いなら半分へ。
そのくらいからで十分です。
次は運動です。
MASLDについては、国際的な診療ガイドラインで、
可能であれば中強度の身体活動を週150分以上
行うことが強く推奨されています。
中強度というのは、簡単に言えば、
「少し息が弾むけれど、会話はできる」くらい
の運動です。
ウォーキングなら、普段の散歩より少し速めに歩くイメージです。
「週150分」と言われても分かりにくいので、1日に分けると次のようになります。
| 行う日数 | 1日あたり | 1週間の合計 | イメージ |
|---|---|---|---|
| 毎日 | 約22分 | 約154分 | 毎日少しずつ続けたい方 |
| 週6日 | 25分 | 150分 | 1日休む日を作りたい方 |
| 週5日 | 30分 | 150分 | 最も覚えやすい「30分×5日」 |
| 週3日 | 50分 | 150分 | 体力に余裕がある人向け。高齢者では無理にまとめなくてよい。 |
70代以上なら、「30分続けて歩かなければ意味がない」と考えなくても大丈夫です。
朝に少し歩く。
買い物へ歩く。
昼食後に少し歩く。
夕方に散歩する。
このように、日常生活の中で身体活動を増やしていくことにも意味があります。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者には3メッツ以上の身体活動を週15メッツ・時以上行うことを勧めており、分かりやすい目安として、
「1日40分程度身体を動かす」「1日約6,000歩」
を示しています。
ここで誤解しないでください。
「毎日40分、ずっと速歩きをしなさい」という意味ではありません。
買い物、外出、家事、散歩など、日常生活の身体活動を含めた目安です。
一方の「中強度150分/週」は、脂肪肝を減らすための運動として示される、より運動に焦点を当てた目安です。
ですから高齢者の場合は、
「まず毎日の活動量を増やす。その中で、できる範囲で少し速めの歩行も増やす」
など、とにかくスタートのハードルを下げましょう。無理をしても続けることができません。
参考:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 高齢者版」、
EASL-EASD-EASO MASLD Clinical Practice Guidelines
そして、70代以降では歩くだけでなく筋肉を守る運動もとても重要です。
厚生労働省は成人・高齢者に対して、
筋力トレーニングを週2~3日
行うことを推奨しています。
「筋トレ」と聞くと、
「ジムで重いバーベルを持たないといけないの?」
と思うかもしれません。
そんなことはありません。
自分の体重を利用する運動も、立派な筋力トレーニングです。
- 椅子からゆっくり立つ・座る
- 安全な場所につかまって、かかとを上げる
- 壁に手をついて行う腕立て運動
- 体力に合わせた浅いスクワット
などから始められます。
最初は「椅子から5回立つ」だけでも構いません。
できるようになったら少しずつ増やします。
高齢者の脂肪肝対策は「歩く+筋肉を使う」の組み合わせが大切です。
もう一つ、運動が苦手な人にぜひ覚えてほしいことがあります。
座りっぱなしを減らしてください。
テレビを見ている途中に一度立つ。
お茶を入れに行く。
洗濯物を片づける。
庭に出る。
少し離れた場所まで歩く。
こんな小さな動きも、何もしないよりずっと良いのです。
70代からの安全な始め方|食べなさすぎない、頑張りすぎない
ここまで読んで、
「よし、明日からご飯を半分にして、毎日1時間歩こう」
と思った方。
少し待ってください。
70代、80代の脂肪肝対策では、
「やりすぎないこと」も健康管理の一つです。
特に注意していただきたいのは、
- もともと痩せている
- 最近、意図せず体重が減っている
- 以前より食欲がない
- 椅子から立ち上がりにくくなった
- 歩く速度が遅くなった
- 転ぶことが増えた
- 疲れやすくなった
という方です。
こうした方が「脂肪肝だからもっと痩せよう」と食事を減らすと、脂肪より先に筋肉や体力を失ってしまうことがあります。
日本人の食事摂取基準でも、75歳以上では身体活動が大きく低下した人などについて、栄養状態を個別に考える必要があることが示されています。
脂肪肝対策で本当に目指したいのは、
体重計の数字をできるだけ小さくすることではありません。
肝臓と内臓についた余分な脂肪を減らしながら、筋肉と元気は残すことです。
難しく考えたくない方は、まず次の3つから始めてください。
-
甘い飲み物を無糖のお茶や水へ替える
毎日のジュース、甘い缶コーヒー、清涼飲料水などがある方は、まずここからです。 -
今より1日10分多く歩く
最初から30分できなくて構いません。10分に慣れたら15分、20分へと少しずつ伸ばします。 -
毎食に「たんぱく質のおかず」を一つ入れる
卵、納豆、豆腐、魚、肉、乳製品などから選び、筋肉を守ります。
これだけでも立派な第一歩です。
慣れてきたら、
- 野菜を一品増やす
- 白米の一部を麦ごはんへ替える
- 肉料理の一部を魚や大豆料理へ替える
- お菓子の量・回数を少し減らす
- 歩行を20~30分程度へ増やす
- 週2~3日、椅子立ちなどの筋力運動を加える
と、一つずつ足していけば十分です。
食事改善では、「禁止」より「置き換え」と考えると長く続きます。
- 甘いジュース → 水・無糖のお茶
- 甘い缶コーヒー → 無糖コーヒーやお茶
- 菓子パンだけの朝食 → パン+卵+無糖ヨーグルト
- 脂身の多い肉料理 → 魚・大豆料理
- 大盛りご飯 → 普通盛り
- 白米だけ → ときどき麦ごはん
- 毎日のお菓子 → 量や回数を少し減らす
- 一日中座る → ときどき立つ・歩く
- 運動ゼロ → まず10分歩く
これなら、
「全部我慢しないといけない」
という苦しさがありません。
そして、お酒を飲む方も一度量を見直してください。
現在のMASLD診療では、「少しのお酒なら肝臓に良い」と積極的に勧める根拠はありません。
脂肪性肝疾患がある人では飲酒を控えることが勧められており、進行した線維化や肝硬変がある場合にはより厳格な禁酒が推奨されます。
特に、
「糖質ゼロだから大丈夫」
「焼酎なら太らない」
「赤ワインだから健康にいい」
と考えないようにしてください。
肝臓が処理するのは、糖質だけではなくアルコールそのものです。
最後に、次のような方は、自己流で食事や運動だけを続けるのではなく、医師や管理栄養士などに相談してください。
- 健康診断や腹部エコーで脂肪肝を指摘された
- AST・ALT・γ-GTPなどの異常が続いている
- FIB-4が高いと言われた、血小板が少ないと言われた
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満を合併している
- 最近、意図せず体重が減っている
- 食欲が落ち、筋力も落ちてきた
- 腎臓病などで食事制限を指示されている
- 膝・腰・心臓・肺などに持病があり、運動を増やしてよいか分からない
- 飲酒量を減らしたいのに、自分では減らせない
また、黄疸、強い腹部膨満、意識がおかしい、吐血・黒い便などの症状がある場合は、単なる生活習慣の問題として様子を見ず、速やかに医療機関へ相談してください。
脂肪肝は、一日でできるものではありません。
そして、一日で消えるものでもありません。
だからこそ、
「100点を3日」より、「70点を1年」
です。
ご飯を一生禁止する必要はありません。
毎日1時間歩く必要もありません。
高価なサプリメントを買う必要もありません。
今日の甘い飲み物をお茶へ替える。
いつもより10分歩く。
朝食に卵や納豆を加える。
夕食の肉を、ときどき魚へ替える。
テレビを見ている途中に立ち上がる。
そんな小さなことからで十分です。
70歳を過ぎてからでも、生活習慣を整える意味はあります。
そして脂肪肝を予防する生活は、肝臓だけではなく、
- 血糖
- 血圧
- 血管
- 心臓
- 筋肉
- 歩く力
を守る生活にもつながっていきます。
目標は、
「ただ痩せること」ではありません。
余分な脂肪は減らし、必要な栄養と筋肉を残し、これからも自分の足で元気に生活すること。
そのために、今日からできることを一つだけ始めてみてください。
主な参考資料
-
日本消化器病学会「MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)」
-
日本消化器病学会「MASLD診療ガイドライン2026」Annual Review公開資料
-
日本肝臓学会「脂肪性肝疾患の診断基準に関して」
-
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 高齢者版」
-
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 筋力トレーニングについて」
-
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
-
Sato A, et al. Nonalcoholic Fatty Liver Disease in Japan Continue to Increase Even after the Launch of Specific Health Checkups. Internal Medicine. 2024.
-
EASL-EASD-EASO Clinical Practice Guidelines on the Management of MASLD. 2024.
※この記事は脂肪肝の予防や生活習慣についての一般的な医学・栄養学情報を提供するものであり、個人の診断・治療を目的とするものではありません。すでに肝疾患を指摘されている方、糖尿病・腎臓病・心疾患などの持病がある方、食事や運動について医療機関から個別の指示を受けている方は、その指示を優先してください。





