このページは、専門的に栄養学を学びたい一般の方や、管理栄養士を目指す学生や社会人を対象にしています。
今回は『脂質の種類と働き』について学んでいきます。
脂質は炭水化物・タンパク質とならんで三大栄養素に位置づけられており、栄養学を学ぶ上では必ず知っておきたい栄養素ですから、しっかり理解していきましょう。
脂質とは
一般的には、脂質=アブラというイメージを持つ方が多いと思う。しかし、専門的に脂質を説明すると『脂質とは、私たちのカラダに存在する生体成分のうち、水には溶けず、クロロホルムやエーテル、ベンゼンといった有機溶媒に溶ける物質の総称』をいう。
つまり、一口に脂質といっても色々な種類が存在する。
現在、脂質に関する認識は高くなってはきているように思うが、依然として脂質に様々な種類が存在することを知らない人もいる。
「オメガ脂肪酸はコレステロールとは違うの?」という質問を受けることが多くあるが、オメガ脂肪酸とコレステロールは別物である。オメガ脂肪酸は脂肪酸の一種だ。
このように、一般の方にとって、脂質の種類は混同してしまいがちであるため、脂質の種類や、それぞれの働きについて正確に知っておく必要がある。
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覚えておきたい脂質の種類
脂質を大きく分けると、『脂肪酸(遊離脂肪酸)』『中性脂肪』『コレステロール』『リン脂質』の4つに分けられる。
これらの脂質は私たちが生きる上で非常に重要な役割を果たしている脂質だ。ではそれぞれを紹介していこう。
脂肪酸(遊離脂肪酸)
脂肪酸は『-COOH』というカルボシキ基を1つ持っており、炭素原子が鎖状につながった『カルボン酸』の総称である。
脂肪酸は、私たちが生きるために必要なエネルギーを生み出すために使われる。
また、エネルギーを生み出すだけでなく後述する中性脂肪やコレステロール、リン脂質を構成しているのも脂肪酸である。
ちなみに血漿に存在する脂肪酸は、遊離脂肪酸として存在している。
脂肪酸にも種類が存在し、大きく分けると『飽和脂肪酸』『不飽和脂肪酸』の2つに分かれる。
近年、サプリメントなどでもよく見かける『オメガ脂肪酸』は不飽和脂肪酸に属する脂肪酸である。このように飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸はさらなる種類が存在する。
中性脂肪
一般的に脂肪と呼ばれるものの多くは、中性脂肪を指すことが多い。
中性脂肪とは、先に紹介した脂肪酸にアルコールの一種である『グリセロール』がエステル結合したものである。
※エステル結合とは酸とアルコールの間で水が失われて生成する結合をいう。
この中性脂肪にも種類があり、グリセロールに脂肪酸が3つ結合すると『トリアシルグリセロール』。
脂肪酸が2つ結合すると『ジアシルグリセロール』。
脂肪酸が1つ結合すると『モノアシルグリセロール』という。
多くの人が気になる体脂肪の大部分は、脂肪酸が3つ結合したトリアシルグリセロールだ。つまり、ダイエットなどで脂肪という言葉がでてきた場合、このトリアシルグリセロールを指す場合が多い。
これらの中性脂肪は、肥満や脂質異常症などの悪いイメージが先行するが、本来は貯蔵エネルギー源としての役割をもつ。
つまり食事が摂れないような飢餓状態の時に使うべく、非常用に蓄えておくものなのだ。
もちろん過剰に貯蔵されれば肥満につながるが、これは生きるために必要なシステムとも言える。
コレステロール
中性脂肪と同じく、コレステロールに関しても悪いイメージを持つ人は多い。
しかし、コレステロールも私たちが生きる上で重要な働きをしている脂質のひとつだ。
生体膜を構成したり、ホルモンや栄養素の消化吸収に関わる胆汁酸の原料にもなる。
コレステロールはカラダに広く分布しており、主に肝臓で作り出されている。
さらにコレステロールにも種類があり、脂肪酸がエステル結合した『エステル型コレステロール』と脂肪酸が結合していない『遊離型コレステロール』の2つが存在している。
血液の血漿にはこれら2つのコレステロールが含まれており、エステル型コレステロール7割、遊離型コレステロール3割の割合で含まれている。
リン脂質
リン脂質は、リン酸を含んでいる脂質(複合脂質)で、『グリセロリン脂質』と『スフィンゴリン脂質』に大別される。
グリセロリン脂質は、グリセロールに脂肪酸2分子が結合し、さらにリン酸と水溶性塩基が結合した構造を持つ。この構造を持つリン脂質には、ホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミンなどがある。
一方、スフィンゴコリン脂質は、グリセロリン脂質のジアシルグリセロールに相当する部分が、スフィンゴシンと脂肪酸が結合したセラミドに置き換えられた構造をしている。代表的なものがスフィンゴミエリンである。
これらのリン脂質は一般的な認知度は低いかもしれないが、カラダにとって重要な脂質のひとつで、私たちの、脳などの神経組織や細胞膜を構成してくれている。
また、リン脂質の特徴は、「水となじむ性質」と「水となじまない性質」の2つの性質を合わせもつことだ。
冒頭で「脂質は水に溶けない」と解説したが、リン脂質に関しては構造の一部に水になじみやすい『親水性』の部分を持っている。
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