摂食行動について学ぼう

今回の「独学で学ぶ栄養学」は「摂食行動」です。
摂食行動とは食事をとる行動の事を指しますが、近年、若者の間でも無理なダイエットから、摂食行動に異常が起こる「摂食障害」になる人が少なくありません。
摂食行動について学ぶことで、人間がなぜ食欲がわいたり、減退したりするのかがわかります。すると、摂食障害や肥満などの改善にも役立つはずです。

空腹感・満腹感ってなんだろう?

栄養学上、空腹感とは食後から数時間経過した時に食べ物が欲しくなる感覚をいいます。空腹感は生物が当たり前に生じる感覚で、これは体の中の栄養素無くなった事を意味します。
空腹感は体が「栄養素を補充してほしい」というサインなのです。

一方で「満腹感」とは、これ以上食べるのをやめさせる機能の事です。いわゆる「お腹がいっぱい」という感覚です。
また、空腹感は不快感、満腹感は満足感をともないます。

食欲ってそもそも何?

栄養学上の「食欲」とは、空腹感とは少し異なります。食欲とは自分の好みや健康状態によって「あれが食べたい」といった特定の食べ物を食べたいと思う欲求をいいます。これは生まれ育った趣味嗜好によって変わるのが特徴です。基本的には過去に食べたことがある食べ物を欲しがる傾向にあります。また、「お腹は減ってないけど、スイーツが食べたい」といった感覚は、栄養が無くなったというサインである空腹感とは少し違うので注意しましょう。

食べる量を調節する「満腹中枢」と「摂食中枢」とは

空腹感や満腹感は体のどこでコントロールされるのかを解説していきます。これらの摂食に関する感覚は「脳」でコントロールされます。下の図を御覧下さい。大脳の「視床下部」という場所にある「満腹中枢」「摂食中枢」がコントロールしています。満腹感は満腹中枢空腹感は摂食中枢です。※空腹中枢というのはありませんので、注意しましょう。

満腹と感じる → 満腹中枢

空腹と感じる → 摂食中枢

満腹中枢が刺激されれば、満腹感がでて人間は食べるのをやめます。満腹中枢を刺激する方法は「血糖値」です。米やパン、砂糖などに含まれる糖分が血糖値を上げる事で満腹中枢が刺激されて食べたく無くなるのです。
逆に、体に栄養が無くなって血糖値が下がると、摂食中枢が刺激されて「お腹がすいた」となるわけです。
満腹中枢・視床下部

なぜケーキバイキングは多く食べれないのか?

なぜケーキバイキングはたくさん食べれないのか
空腹感、満足感の理屈がわかるとケーキバイキングであまり食べれない理由が分かります。今日はケーキバイキングに行くからといって、気合をいれてお腹を空かせていくのは最悪です。空腹時は体の栄養素の吸収が促進されています。その状態でケーキをを食べた場合、血糖値が急上昇を起こします。すると満腹中枢が刺激されてしまい、全然食べていないのにケーキを食べれなくなってしまうのです。しかも、体に栄養素が不足した状態で「これ以上食べれない」という感覚になるわけですから、少ししか経ってないのに、またお腹が減ってしまいます。
したがって多くケーキを食べたい場合は急激な血糖値の上昇を抑える必要があります。バイキングに行く前にサラダを食べておくなどの血糖値対策をして、戦いに挑みましょう。
健康のために食べ過ぎは良くないですけどね・・・笑  ほどほどにしましょう。

摂食行動に影響を及ぼす要因

満腹中枢、摂食中枢を刺激する要因は「血糖値」であることに触れましたが、血糖値以外にも行動を調整する要因があります。ここでは摂食行動に影響を及ぼす4つを学びましょう。

①血糖値による調節

先ほども少し解説しましたが、もう少し詳しく解説していきます。米やパン、砂糖に含まれるグルコース(糖質)という栄養素が要因となって満腹中枢、摂食中枢が刺激されます。
満腹中枢には「グルコース受容ニューロン」、摂食中枢には「グルコース感受性ニューロン」というものが存在します。
血中のグルコース濃度が上昇するとグルコース受容ニューロンの活動が活発になります。一方で、グルコース感受性ニューロンの活動は低下します。これによって満腹感が出るのです。
空腹感は逆の事がおこります。血中のグルコース濃度が低下するとグルコース感受性ニューロンが活性、グルコース受容ニューロンは活動が低下して空腹感が出ます。

また、糖尿病を学ぶとよく出てくる「インスリン」もグルコース受容ニューロンに作用すると現在では考えられています。食後は血糖値の上昇とともにインスリン濃度も高まります。これが満腹中枢を刺激する可能性がある事が示唆されています。

②自律神経による調節

満腹感はグルコースによってのみ引き起こされる訳ではありません。「胃の拡張」によっても満腹感が出るようになっています。これは「自律神経」による作用です。食事によって食べ物が胃に入る事で胃の壁が拡張します。すると胃に張り巡らされる「副交感神経(自律神経のひとつ」によって、刺激が満腹中枢に伝えられて満腹感を感じます。
一方で、胃が空の状態になると胃は収縮を起こします。これを「飢餓収縮」といいます。この飢餓収縮は約30~45分ほど続きます。この収縮によって「迷走神経」を通じて摂食中枢が刺激されて空腹感を感じます。空腹感を感じる割合は収縮運動2回につき1回空腹感を感じます。

③ホルモンによる調節

その他に食べる行動を抑制する要因として「ホルモン」があります。食事をして胃や腸に食べ物が入ってくると、消化管からホルモンが分泌されます。その中でコレシストキニンというホルモンが分泌されると摂食が抑制されます。コレシストキニンは、アミノ酸や脂肪酸、ペプチドなどが十二指腸に送られると分泌されます。

逆に空腹感を促進するホルモンもあります。視床下部に存在する「神経ペプチド(NPY)」や胃から分泌される「グレリン」に食事を摂りたくさせる作用があります。ちなみにグレリンには体重増加作用もあるとされています。

④その他の調節要因

その他には人間の「五感」によっても、食欲は影響します。
嫌な臭いがする食べ物が目の前にだされたら、食べたく無くなりますよね。それは嗅覚が脳の中枢を刺激する為です。この他にも、見た目の視覚、味を感知する味覚は食欲に影響をおよぼします。
また、ストレスも食欲増進・減退の要因です。ストレスが多い場合は消化器官の働きが低下して食欲がなくなります。

なぜ肥満の人は痩せないのか

なぜ痩せないのか
本来であれば、人間の身体は過剰に脂肪がついた場合、痩せるように調整できるようになっています。
体に多く脂肪が蓄積した場合、脂肪細胞から「レプチン」というホルモンが分泌されます。このレプチンは食欲抑制ホルモンです。満腹中枢に働きかけて食欲がわかないようにします。さらに、運動をつかさどる「交感神経」に働きかけて脂肪が燃焼しやすくなるように、エネルギー消費を高めてくれます。
このような調節機能が人間にはあるにも関わらず、痩せない肥満の人がたくさんいます。肥満症の人の血液を調べると血液中のレプチン濃度は高い状態です。つまり、レプチンはちゃんと出ています。にも関わらず痩せられません。これはなぜかというとレプチンを受け止める「レプチン受容体」という場所の働きが悪いからと考えられています。これだといくらレプチンが分泌されても痩せる事ができません。

まとめ

・摂食行動を学ぶ事で、なぜ人間が食欲がわいたり、無くなったりするのかが分かる
・「食べたい」「食べたくない」という判断は脳の満腹中枢、摂食中枢がコントロールしている
・食欲が増減する要因は「血糖」「自律神経」「ホルモン」「五感」の4つである
・人間は本来であれば太ったら、痩せるように出来ている。
・肥満症の人は「レプチン受容体」の働きが悪くなっている。