管理栄養士のタイゾーです。
このページでは高齢者がタンパク質を摂るメリットについて解説しています。
タンパク質は私たち人間にとって必要不可欠な栄養素です。
特に高齢者の場合は、若い人に比べて食事量が少なくなるのでタンパク質不足になりやすくなります。
タンパク質はカラダを作ったり、回復するために使われる栄養素ですから、不足すればカラダの不調や病気、ケガを招く可能性もあります。
このページで高齢者がタンパク質を摂るメリットを学び、日頃からタンパク質を摂取するようにしましょう。
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タンパク質とは
まず、タンパク質がどのような栄養素なのかをご紹介しておきます。
タンパク質とは、『三大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)』のひとつに位置づけられており、老若男女問わず、日頃の食事で摂取したい栄養素です。
動物性の肉や魚、大豆といいた食品に多く含まれており、カラダの中に入ると『アミノ酸』という栄養素に分解されて吸収されます。
吸収されたアミノ酸はカラダの中でタンパク質に再び合成され、筋肉や内臓、皮膚、爪、髪などカラダ全てを作るための材料となります。
高齢者にタンパク質が必要な理由
タンパク質が私たち人間にとって必要不可欠な栄養素であることは先に紹介した通りですが、特に高齢者がタンパク質を摂るべき必要性について解説していきます。
高齢者は栄養不足になりやすい
タンパク質も含め、高齢者は栄養不足になりやすい事を覚えておきましょう。
なぜ高齢者が栄養不足になりやすいのかというと、食べる食事の量が減ってしまうからです。
年齢と共に食事量が減るのは当たり前ですが、理由としては以下のようなことがあります。
- 食欲の低下
- 飲み込むチカラ(嚥下能力)が低下
- 噛むチカラ(咀嚼能力)が低下
これらの理由から、高齢者は若い人に比べて摂取する栄養が少なくなりがちです。
食事量が減ればタンパク質も不足しやすい
先に紹介したような要因から、全体の食事量が減った場合、必然的にタンパク質の摂取量も減少する可能性は十分考えられます。
したがって、タンパク質の重要性をしっかりと理解し、普段の食事でタンパク質を補う必要があるのです。
高齢者がタンパク質で期待できる効果
次に高齢者がタンパク質を摂取することで、期待できる効果について解説していきます。
骨折や寝たきりの防止
タンパク質の摂取は、骨折や寝たきりの防止につながります。
高齢者の中には、骨折をきっかけに『寝たきり』になってしまうひとも少なくありません。
高齢者が骨折をしてしまうと、若い人に比べて回復が遅いため、そのまま寝たきりになってしまうリスクが高くなります。
このような骨折→寝たきりにならないようにするためには、食事でタンパク質を摂取しておくことが重要です。
ただ、「骨折を防止するにはカルシウムのが重要じゃないの?」
と思う人もいるでしょう。
もちろん骨を丈夫にして骨折を防ぐという意味でカルシウム摂取は必要です。
ただ、高齢になってくるにつれカルシウムで骨を回復するチカラは弱まってきますし、骨だけ回復しても骨折と寝たきりのリスクは残ります。
そこで骨の回復と共に重要になってくるのが『筋肉』です。
私たちの筋肉は、転倒した際に衝撃をやわらげる役目をしているため、骨折を防止してくれるのです。
また、運動機能を担っているのも筋肉ですから筋肉があることで、つまずいて転倒を防ぐといった役目をしてくれます。
したがって高齢者が骨折のリスクを下げるためには、骨の回復だけでなく、筋肉の量をたもったり、増やすことが重要になってくるのです。
では、筋肉の低下を防いだり、増やしていくために何が必要かというと、タンパク質です。
筋肉は主にタンパク質から合成されるため、「筋肉を落としたくない」と思うのであれば、材料となるタンパク質を摂取する必要があるわけです。
ただ、タンパク質だけとれば自動的に筋肉が回復していくわけではありません。
運動をして筋肉に刺激を与えることも必要になってきますから、筋肉をつけるために『タンパク質の摂取』と『適度な運動』を取り入れるようにしましょう。
またタンパク質は筋肉を回復させるだけでなく、先に紹介した『骨の回復』にも関わっています。
骨を回復するためにカルシウムが必要であることは先に紹介した通りですが、同時にタンパク質も摂るとカルシウムの吸収率が上がります。
したがって、タンパク質は骨の回復、筋肉の回復の2つの側面から高齢者の骨折防止に役立つと言えます。
血管の老化を防ぐ
タンパク質は血管を若々しくたもつためにも役立ちます。
高齢になると『高血圧』や『脳梗塞・心筋梗塞』といった血管の障害からおこる病気のリスクが高まります。
なぜこれらの病気になりやすいのかというと、加齢による『血管の老化』が原因のひとつと考えられています。
血管の老化とは血管が弾力を失い、もろくなる『動脈硬化』と言われるものです。
これら血管の病気を防ぐためには、血管の老化を防止し、若々しくたもつ必要があります。
そこで摂取してもらいたいのがタンパク質です。
タンパク質は血管を作るための材料のひとつであり、血管の回復や老化防止に利用される性質があります。
血管は歳をとっても若々しくたもつことはできますので、材料となるタンパク質はしっかりと摂取するようにしましょう。
野菜も摂とると効果アップ
血管を若くたもち血管の病気を予防するためには、タンパク質の他にビタミンやミネラルも必要になってきます。
そこで肉や大豆などの高タンパク食品の他に、ビタミンやミネラルがたっぷり含まれている『野菜』も食べるようにしましょう。
ビタミンやミネラルという栄養素は、タンパク質ほど多くの量を摂る必要はありませんが、血管の老化防止や血管の回復をサポートしてくれる作用があるため、タンパク質と一緒に摂ることで相乗効果が期待できます。
また野菜類には、老化の原因となる『活性酸素』を除去してくれる『抗酸化成分』が含まれているため、さらに血管の老化防止に役立ちます。
これら植物に含まれる抗酸化成分を『ファイトケミカル』といい、近年では『第7の栄養素』と呼ばれるようになりました。
では具体的に、野菜はどの程度摂取すればよいのかというと、1日350gの摂取を目標にしましょう。
高齢者にとって350gはかなり多い量ですが、これは厚生労働省が定める『健康日本21』で推奨されている量になります。
サラダなどの生食では大変ですが、加熱することでカサが減って食べやすくなりますので、茹でたり、煮たり調理法を工夫してできるだけ多く摂るようにしましょう。
ただ350gという量は理想ですから、無理やり食べて胃の不調を招いてはいけません。したがって負担にならない程度に多く食べるようにしてください。
タンパク質はどんな食品で摂ればいいの?
タンパク質を効率良く摂取するためには、タンパク質を豊富に含む食品を食べると良いでしょう。
タンパク質は様々な食品に含まれていますが、特に豊富に含まれているのが『肉・魚・大豆』といった食品です。
しかし、肉の部位や魚の種類によってもタンパク質量は変わってきます。そこで下記ページではタンパク質を豊富に含むオススメ食材をランキング形式で紹介しているので、食材選びの参考にしてください。
好き嫌いもあると思うので、自分に合った食品を選んで頂くと良いでしょう。
高齢者タンパク質をどれくらい摂ればいい?
タンパク質を摂るうえで、高齢者がどのくらいタンパク質を摂ればいいのかを把握しておく必要があります。
栄養学.netでは、筋肉を増やすためにタンパク質を摂取する場合、標準体重1kgあたり1gのタンパク質摂取をオススメしています。
身長が150cmの人を例にしてタンパク質量を計算してみましょう。
自分の標準体重は 標準体重(kg)=(身長(m)×身長(m))×22 で求めることができます。
身長150cmの人の場合、 1.5 ☓ 1.5 ☓ 22 =49.5 つまり49.5kgが標準体重です。
標準体重1kgあたり1gのタンパク質量ですから、49.5gになります。
つまり、150cmの人であれば、およそ50gくらいタンパク質を摂れば良いと思ってください。
ちなみに厚生労働省が定めた『日本人の食事摂取基準2015年版』にも1日のタンパク質推奨量が定められており、50歳以上の男性:60g、女性:50gに設定されています。
タンパク質の摂りすぎはダメ
高齢者にとってタンパク質が必要な栄養素であることは間違いありません。
しかし、極端に摂りすぎれば肝臓や腎臓に負担がかかってしまうため、過剰摂取には気をつけて下さい。
具体的な量でいうと、標準体重1kgあたり2gのタンパク質量は超えないようにした方がよいでしょう。
タンパク質の過剰摂取によるリスクは下記ページで詳しく解説していますので参考にしてください。
■タンパク質のとりすぎが招く5つの危険性
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