管理栄養士のタイゾーです。
このページでは白血病を予防するための食事や、再発を防ぐための食事について栄養士の視点から解説しています。
白血病とは
白血病とは血液のがんのことです。
もう少し詳しくいうと、血液中の『血球ががん化』してしまう事を白血病といいます。
私達の血液は酸素を運ぶ『赤血球』、細菌やウイルス、がん細胞を排除する『白血球』、出血を止める『血小板』という3つの血球と、『血漿(けっしょう)』という液体からできています。
白血病を理解するためには、まず血球がどのようにできるのかを知っておく必要があります。
骨の中には『骨髄』という場所があります。
骨髄はゼリー状になっており、『造血幹細胞』という細胞を作り出しています。
この造血幹細胞が変化(分化)して赤血球、白血球、血小板ができあがります。
このような血液をつくる過程で異常が発生し、白血球が『がん化』してしまうことでできるのが『白血病細胞』といわるものです。
白血病細胞は無制限に増えて、骨髄にたまり、健康な血液が作られるのを邪魔してしまいます。
また、血液に乗って肝臓や脾臓(ひぞう)に侵入することで様々な症状を起こします。
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白血病の種類
白血病はまず大きく2つに分けられます。
急速に進行してしまう『急性白血病』と、ゆっくりと進行する『慢性白血病』です。
急性白血病は『急性骨髄性白血病』、『急性リンパ性白血病』に別れ、慢性白血病は『慢性骨髄性白血病』『慢性リンパ性白血病』に別れます。
白血病の症状
国立がん研究センターによると、白血病の発症は40歳以降の成人に多く、健康診断などで白血球の増加から発見されることが多いとされます。
病気の進行により白血球と血小板が増えていき、骨髄が白血病細胞でいっぱいになってきます。
すると赤血球が圧迫されるため、次第に貧血などの症状があらわれます。
さらに、白血球が増加するにつれ下記の症状があらわれるようになります。
- 鼻血などの出血
- 体重減少
- 倦怠感
- 無気力
- 夜間の寝汗
- お腹の膨満感(ぼうまんかん)
白血病の原因とは
なぜ白血病になってしまうのでしょうか。
国立がん研究センターは、『白血病発症の十分な解明はされていない』としています。
ただ近年の研究によって、私達の細胞の遺伝子が傷つくことで、がんが発生していることがわかってきました。
では、どんなことをすると遺伝子が傷つくのでしょう。
日本成人白血病治療共同研究グループによれば、次にあげる要因が遺伝子を傷つけてがん発生に関わっているとしています。
- タバコ
- 放射線
- HTLV-Iウィルス
- 発がん物質の摂取
- 薬
参考文献:JALSG日本成人白血病治療共同研究グループ 白血病の原因
白血病のための食事
「白血病に、どんな食事をとればいいの?」
と疑問を持つひとのために、食事を摂るうえでのポイントをご紹介していきます。
前置きせねばなりませんが、白血病が治ると認められた食事は存在しません。
したがって食事だけで治そうとせず、病院での治療を必ず受ける必要があります。
しかし、私達の免疫力もカラダも食べたものから出来るため、白血病の予防や退院後の回復には食事内容が非常に大切になってきます。
そこで、白血病のために、どのような食事を摂っていけばいいのか、ポイントを栄養士視点で紹介していきます。
食べるのを注意したい食品
まず先に、白血病の人が退院したあとに注意してほしい食品を紹介しておきます。
退院したあとは免疫力が低下しているため、細菌などが付着しやすい食品は避ける必要があります。以下に注意したい食品をあげておきますので参考にしてください。
- ナマモノ(刺し身や生クリーム
- 納豆
- カビのついたチーズ(カマンベールなど)
- 自家製の漬物
- 自家製ヨーグルト
- 生野菜
上記は一例として上げておきましたが、人によっては食べてもいいものもあります。退院するときに主治医に確認するようにしてください。
また退院してからは、食材はしっかり加熱してから食べるようにしましょう。加熱することで細菌は死滅します。
では次に積極的に食べたい食品をご紹介していきますが、これらの食材も加熱することを心掛けてください。
たんぱく質を意識して食べよう
白血病の予防や、退院してからの食事にぜひ意識して食べてほしいのが「たんぱく質」です。
たんぱく質とは、私達が必ず摂取しなければならない「3大栄養素」のひとつで、肉や大豆などに含まれている栄養素です。
なぜ私が、白血病で悩む人にタンパク質をオススメするかというと、「カラダの回復」「免疫力を作る」という2つの目的があります。
免疫力を作るために必要
注意してほしいのは、たんぱく質を摂る目的は、免疫力を上げるだけでなく、免疫力を「作る」ということです。
免疫力とは、NKキラー細胞などの「免疫細胞」の働きによるものです。
普段はカラダの細菌や、がん細胞などと戦って病気にならないようにしてくれています。
「免疫力を上げる」という食品は多く存在しますが、その多くは、免疫細胞の働きを活発にするという作用をします。
しかし、これはカラダに免疫細胞が存在することを前提としていますから、もしカラダに免疫細胞が少なければ、免疫力を上げる食品をいくら食べても意味がありません。
そこで食べてほしいのが、免疫細胞自体と作り出すために必要な「たんぱく質」というわけです。
カラダの回復に使われる
たんぱく質をオススメするもうひとつの理由が「カラダの回復」です。
特に退院して間もない時期は体力が低下している事が多いですから、とにかくカラダの回復に重点をおく必要があります。
では、カラダを回復するためにどんな栄養素が必要かというと、たんぱく質です。
もちろん、その他の栄養素も必要になってきますが、カラダの回復を狙うなら、第一にたんぱく質を意識するべきでしょう。
なぜたんぱく質を摂らなければならないかというと、私達のカラダの多くがたんぱく質でできているからです。
私達のカラダは60兆個の『細胞』からできいますが、その主成分がたんぱく質なのです。
つまり、たんぱく質の摂取がカラダの細胞の回復につながることで、全身のカラダの回復につながるわけです。
ぜひ「カラダを回復したいなら、たんぱく質!」と覚えておきましょう。
大豆製品からはじめて、胃腸の調子をみながら肉を取り入れる
「たんぱく質は何で食べればいいの?」という人のために、たんぱく質を含む食品について解説しておきます。
たとえば、退院したばかりの人であれば胃腸が弱っている人もいるはず。
そこでまず食べたいのはヘルシーな『豆腐』などの大豆製品です。(納豆はNGです)
動物性の肉や魚の肉には良質なたんぱく質が豊富に含まれていますが、脂質も多く含まれているため消化をするのに胃腸に負担がかかります。
そこで豆腐などのヘルシーな植物性たんぱく質からはじめ、胃腸の調子が良くなってきたら、肉を食べるようにしましょう。
肉の中でもオススメなのは魚です。
魚はたんぱく質が豊富なだけでなく、『不飽和脂肪酸』という健康に役立つ脂質もたくさん含まれているため、カラダの回復や免疫力のために役立ちます。
また「動物性の肉は食べてはいけないの?」という質問を良く受けますが、食べてはいけないというわけではありません。
ただ、摂りすぎには注意してください。
動物性の肉には『飽和脂肪酸』という脂質が含まれており、摂りすぎてしまうと血液中の悪玉コレステロールを上げることになってしまいます。
がんと動物性の肉の関わりは下記ページで紹介していますので合わせて参考にしてください。
関連ページ:がんの食事に動物性の肉がダメな理由
野菜をたくさん食べよう
たんぱく質と一緒に意識して食べたいのが『野菜』です。
「野菜がカラダにいいのはわかっている」
という人は多いですが、実際のところあまり食べれていない人も多いのでは。
白血病だけでなく、がんの予防や再発を防ぐためには野菜を多く摂ることは大切です。
野菜はカラダに必要なビタミンやミネラル、食物繊維を摂取できるだけでなく、がん予防につながる『ファイトケミカル』を摂取できます。
ファイトケミカルとは野菜に含まれる「色素」「匂い」「しぶみ」「灰汁(あく)」といった成分のことで、その高い『抗酸化作用』から、がんの原因となる活性酸素を除去する効果が期待できるのです。
関連ページ:癌・老化防止成分「ファイトケミカル」を上手に摂るたった1つの方法
ファイトケミカルの種類は非常に多いため、ひとつひとつを覚えるのは大変です。
しかし、基本的に野菜に多く含まれていますから、野菜を多く食べるようにすれば摂取できると思えば良いでしょう。
では、「どのくらいの量の野菜を食べれば良いのか?」ですが、『1日に350g』を目指して下さい。
「そんなに?!」
と思うかもしれませんが、日本国が定めた「健康日本21」にも野菜の1日の摂取目標量は350gとされています。
生野菜で350gを摂るのは難しいですが、蒸したり、炒めたり、煮たりすることで、かさが減り多く食べることができますので、調理法を工夫して食べるようにしましょう。
また、退院した直後は免疫力が低下しているため、食材に含まれる雑菌によって体調が悪くなることも考えられます。したがって野菜は加熱して食べるようにしましょう。
心配な場合は主治医に確認してくださいね。
参考ページ:厚生労働省 栄養・食生活
まとめ
このページでは白血病で悩むひとのための食事について紹介しましたが、基本的に病院の治療が必要です。
治療と平行して、正しい食生活を送ることがカラダの回復や、がんの再発防止に役立つことを忘れないようにしてください。
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