脂肪燃焼の仕組み

今回は脂質の代謝です。

私たちが摂取した脂質(トリグリセリド)がどのようにエネルギーになっていくのか。一連の流れを学んでいきましょう。

エネルギーになっていくまでの流れというと難しく聞こえるかもしれませんが、ようは脂肪がどのように燃えていくか(脂肪燃焼)という事です。

脂質とは何か?

脂質がエネルギーに変換されていくまでの流れを説明する前に、脂質がどのような栄養素かを学んでおきましょう。

脂質とは、私たちのカラダを構成する生体成分のうち、水に溶けずに、クロロホルムやエーテル、ベンゼンといった有機溶媒に溶ける物質の総称をいいます。

一口に脂質といっても様々な種類が存在しますが、基本的には脂肪酸(遊離脂肪酸)、中性脂肪(トリグリセリドなど)、コレステロール、リン脂質の4つに大別されます。

この辺りの脂質の種類や働きについては下記ページで別途解説しています。「脂質が何かわからない」という方はまず下記ページを読んでからこのページを読み進めるようにして下さい。

>>管理栄養士国家試験対応『脂質の種類と働き』

脂質(トリグリセリド)の代謝の流れ


ここからは中性脂肪(以下トリグリセリドと呼ぶ)がエネルギーになって燃焼されるまでの一連の流れを解説していきます。

脂質代謝の流れをまとめると上の表のようになります。ただ、これだけ見ても分からない方も多いでしょうから流れを詳しく説明していきます。(トリグリセリド)基本のポイントになる部分を押えていくので管理栄養士国家試験対策に読む方はしっかり読むようにして下さい。)

トリグリセリドのグリセロールは解糖系でエネルギーに変わる

まずトリグリセリドの構造のおさらいですが、>>管理栄養士国家試験対応『脂質の種類と働き』で解説しているように、トリグリセリドは下の図のような構造をしています。

グリセロールに脂肪酸が3つくっついている(エステル結合)構造なわけですが、グリセロールと脂肪酸は別々のルートでエネルギーとして燃焼されていくのです。

まずグリセロール部分は『解糖系』でエネルギーになっていきます。解糖系といえば、糖質の燃焼が行われるイメージを持っている方もいるかもしれませんが、トリグリセリドのグリセロール部分の代謝も行われます。

「解糖系って何?」という方は下記ページを参考にどうぞ。
>>解糖系・TCA回路・電子伝達系の解説

脂肪酸は細胞質でアシルCoAに

では、次に残りの脂肪酸部分です。

脂肪酸がエネルギーとして燃焼されるまでの大まか流れは以下のようになります。

脂肪酸→細胞質に取り込まれる→アシルCoAに変換→カルニチンと手をつなぐ→ミトコンドリアのマトリクスへ取り込まれる→β酸化→アセチルCoAに変換→TCA回路でエネルギーに!

という流れになります。これだけだと訳がわからないと思うので、もう少し詳しくいきましょう。

細胞質でアシルCoAに

脂肪酸部分はエネルギーに変換される時に、まず細胞質に取り込まれます。

取り込まれた脂肪酸はコエンザイムAという補酵素とくっつき、アシル-CoAというものになります。※コエンザイムは水溶性ビタミンのパントテン酸から作られる

カルニチンと手をつないでミトコンドリアへ

細胞質で作られたアシルCoAは、次にミトコンドリアへと入ります。

しかし、このままではミトコンドリアに入ることができません。ミトコンドリアの内膜を通過することができないんです。

そこで必要なのが『カルニチン』。カルニチンがアシルCoAと手をつないでミトコンドリアの中に連れて行ってくれます。

脂肪酸部分はβ酸化を受ける

さあ、カルニチンによってアシルCoAはミトコンドリアに入ることができました。次に行われるのが『β酸化』という反応です。

β酸化とは具体的にいうと脂肪酸のカルボキシル基側から炭素が2個とれ、『アセチル-CoA』が作られることをいいます。これはミトコンドリアの真ん中にある空間のような部分の『ミトコンドリアマトリクス』という場所で行われます。

β酸化でアセチル-CoAが作られることが分かればokです。

ここで作られたアセチル-CoAはTCA回路→電子伝達系という経路をたどり大量のエネルギーを作るのに利用されます。

TCA回路と電子伝達系がエネルギーを作る仕組みは下記ページで解説していますので、わからない方や忘れた方は参考にどうぞ。

>>解糖系・TCA回路・電子伝達系の解説

また、β酸化によってアセチルCoAが作られる時に『ケトン体』という酸性物質も作られますので合わせて知っておきましょう。

ポイントまとめ

  • トリグリセリドのグリセロールは『解糖系』、脂肪酸は細胞質→ミトコンドリアで代謝される。
  • 脂肪酸がミトコンドリアに入るには『カルニチン』が必要。
  • ミトコンドリアのマトリクスでβ酸化を受ける
  • β酸化は脂肪酸のカルボキシ基側から炭素が2個とれてアセチル-CoAができる反応