「タンパク質の摂り過ぎって大丈夫?」
「タンパク質の摂り過ぎって副作用とかあるの?」
このページはそんな疑問を持つ方に向けて作成しています。
管理栄養士のタイゾーです。
今回は『タンパク質の過剰摂取』について解説してきたいと思います。
筋肉の増加や、カラダの回復、健全な発育のためには、カラダの材料となるタンパク質の摂取が必要不可欠です。
タンパク質が不足してしまった場合、筋力の低下や体力・免疫力の低下につながる可能性があります。
したがって日頃からタンパク質をしっかりと摂取しておく必要があるわけですが、注意すべき点があります。
それが「タンパク質の摂りすぎ」です。
タンパク質が私たちにとって必要な栄養素であることは間違いありませんが、摂り過ぎると悪影響を及ぼすことも覚えておかねばなりません。
「栄養だから大丈夫」と安易に摂り過ぎれば、返ってカラダのパフォーマンスを落とす可能性があるのです。
次にタンパク質の過剰摂取によるリスクを紹介していくので、筋トレや健康のためにタンパク質を取り入れたいと思っているひとは是非参考にしてください。
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タンパク質の摂り過ぎは危険であることを覚えておこう
先に紹介したように、タンパク質がカラダに必要な栄養素であることは間違いありません。
たたどんな栄養素も摂り過ぎればカラダの負担になる可能性があります。
ちなみに、当サイトでは『体重1kgあたり、2g以上のタンパク質は控えるべき』としています。
例:標準体重が60kgの場合、タンパク質摂取量は120gは超えないようにする
具体的にタンパク質を摂りすぎた場合のリスクを次にあげておきます。
- 肝臓や腎臓に負担がかかる
- 便秘や下痢を引き起こす
- 骨粗しょう症になりやすくなる
- 肥満の原因になる
- 尿路結石のリスクが上がる
タンパク質の摂り過ぎは肝臓や腎臓に負担がかかる
なぜ、肝臓に腎臓に負担がかかるかというと、タンパク質の処理に大きく働いてくれているのが肝臓と腎臓だからです。
通常、タンパク質は『アミノ酸』という物質に分解、吸収されて肝臓へ運ばれます。
そして肝臓から全身の細胞に運ばれて、カラダの回復や筋肉の増強や再生など様々な用途で利用されます。
しかしタンパク質があまりに過剰になると、アミノ酸が細胞に運ばれたあとに『余分にあまったアミノ酸』がでてきます。
この『あまったアミノ酸』は、もうタンパク質合成に使うことはできないので、肝臓がアミノ酸を分解して別の物質を作ったり、腎臓がカラダの外へ排泄するために活発に働くようになります。
つまり、タンパク質を過剰に摂取すると、使い切れない分を処理するために肝臓や腎臓が働かなければならないという事です。
これが続いてしまうと肝臓や腎臓のオーバーワークを招いて、機能低下を招く可能性があるのです。
肝臓の過剰な負担は全身の代謝が低下を招き、また腎臓の過剰な負担は腎疾患を招く可能性があります。
運動のパフォーマンスが低下する
もうひとつ覚えておきたいのが、肝臓・腎臓に負担がかかることで運動のパフォーマンスが落ちる可能性がることです。
先に紹介した通り、タンパク質を過剰摂取すると処理するために肝臓と腎臓が忙しく働くようになります。
すると肝臓に貯蔵されている『グリコーゲン』やアミノ酸を全身の細胞に運ぶという役割がおろそかになってくるのです。
グリコーゲンは長時間運動するときのエネルギー源になるもので、肝臓だけでなく筋肉にも貯蔵されています。
基本的には長時間運動をすると、筋肉のグリコーゲンから使われていきますが、使い切ると肝臓に貯蓄されているグリコーゲンをエネルギーとして利用します。
しかし、肝臓があまったアミノ酸の処理に追われていると、肝臓のグリコーゲンが利用できないのです。
結果的にエネルギーがうまく出せないので運動のパフォーマンスが低下してしまいます。
便秘や下痢を引き起こす
便秘というと食物繊維不足をイメージするひとも多いでしょうが、実はタンパク質の過剰摂取も便秘を引き起こす原因となります。
さらに便秘だけでなく、下痢も引き起こすと考えられています。
なぜ過剰なタンパク質が便秘や下痢を引き起こすかというと、腸内環境の悪化に原因があります。
特に肉などの動物性タンパク質を多く摂り過ぎた場合、腸内の『悪玉菌』が増えて腸内環境の悪化を招いてしまう危険性があります。
腸内環境が悪化した結果、便秘や下痢の症状が出やすくなるというわけです。(人によって便秘になるか下痢になるかは違います)
骨粗しょう症になりやすくなる
タンパク質の摂りすぎは骨粗しょう症になるリスクもあげます。
骨粗しょう症とは、骨密度が低下して骨がスカスカになる状態をいいます。
骨粗しょう症というと、カルシウム不足とか閉経後になりやすいというイメージがありますが、タンパク質の過剰摂取もリスクを上げる要因のひとつです。
では、なぜタンパク質過剰が骨粗しょう症を招くのか解説しましょう。
先ほども紹介したように、タンパク質はアミノ酸に分解されて利用されるわけですが、使いきれなかった一部のアミノ酸は肝臓で『アンモニア』となります。
その後、『尿素』という無害な物質に作り変えられ、尿と一緒に排泄されます。
「排泄されるなら問題ないのでは?」
と思うかもしれませんが、問題は排泄される時に『カルシウム』も一緒に排泄されてしまうことです。
骨を強くするために必要なカルシウムが排泄されてしまえば、それだけ骨粗しょう症になるリスクが高まってしまうというわけです。
もちろん、1日だけタンパク質を摂りすぎたところで骨粗しょう症になるわけではありません。
しかし継続的にタンパク質を摂りすぎてしまった場合に起こるリスクのひとつとして覚えておいて損はありません。
肥満の原因になる
タンパク質の摂りすぎは肥満につながることも覚えておきましょう。
「タンパク質は筋肉になるから太らない」
と思っている人がいますが、そうとも言い切れません。
タンパク質が筋肉の材料になるのは確かですが、摂取したタンパク質が100%筋肉になるわけではありません。
必要以上に摂取した分は、脂肪に変換されてカラダにたくわえられてしまいまうのです。
つまりタンパク質も摂りすぎれば肥満につながるというわけです。
ただ、しっかりと運動を行っていれば利用されてるので肥満の心配は少なくなります。
タンパク質を多く摂りたい場合は運動もする必要があることを覚えておきましょう。
尿路結石のリスクが上がる
「尿路結石とタンパク質って関係あるの?」
と思うかもしれませんが、特に肉などの『動物性タンパク質』を多く取る場合は尿路結石につながる可能性があります。
動物性タンパク質には『含硫アミノ酸』という成分が多く含まれており、この含硫アミノ酸を肝臓が分解するときに『リン酸塩』や『含硫塩』といった物質が発生します。
これらの物質は腎臓でカルシウムの再吸収を邪魔し、『シュウ酸』とカルシウムをくっつけて『シュウ酸カルシウム』という結晶を作り出します。
これが、尿路結石を招いてしまうのです。
動物性の肉はタンパク質を多く含む理想的な食品ですが、時には大豆など植物性のタンパク質も取り入れるようにしましょう。
結局、タンパク質はどれくらい摂取すればいいのか
タンパク質の過剰摂取によるリスクについてご紹介してきましたが、気になるのは
「じゃあ、どのくらいのタンパク質を摂ればいの?」
ということです。
理想的なタンパク質量については、様々なエビデンスが存在しているので一概には言えませんが、栄養学.netでは体重1kgあたり1gのタンパク質をとることをオススメしています。
例えば標準体重が60kgの人であれば、60gのタンパク質摂取が望ましいということです。
これからタンパク質を取り入れていこうと思っているひとはこの量を参考にしてください。
体重1kgあたり2gまでが無難
もうひとつのポイントが、「タンパク質量はどのくらいまでに抑えるべきか」です。
このページで紹介しているように、タンパク質の過剰摂取は様々な悪影響をおよぼす可能性があります。
体重1kgあたり4gまでは副作用がでないとも言われますが、これは人によります。
アスリートやボディビルダーのような競技者であれば別ですが、一般の方が健康維持を目的とした場合は、体重1kgあたり2g程度までに控えた方が無難でしょう。
ただ、この数値も体重70kgの人なら140gもタンパク質を摂るわけですから、プロテインなど特別意識しなければ摂れない数値です。
基本的には通常の食事に、意識して肉や魚、大豆等をメイン食材をとり入れるくらいであれば、過剰にならないので心配はありません。
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為になる記事、ありがとうございました。以前糖質制限をしてタンパク質の摂取量を増やしたら、体重は減りましたが、血液検査の結果が少し悪くなった経験があります。難しいですね。
質問なのですが、上記のタンパク質量の目安は、1日に食べる合計量ですか?それとも1食分でしょうか?
また、タンパク質を多く含む食品、例えば肉といっても100%タンパク質ではないですよね?それでも、肉や魚(可食部分)100gは、タンパク質100gと考えていいのでしょうか?
何だかバカみたいな質問ですみませんが、おヒマな時で結構ですので、簡単にご教示頂くと助かります。
りこ様
当サイトをご覧いただきありがとうございます。
ご質問の内容でございますが、タンパク質の目安量は1日の摂取量になります。
また、肉も魚も100%がタンパク質で出来ているわけではありませんので、成分表などの記載がある場合『タンパク質量』を参考になさってください。
可食部というのは、食べられる部分ということです。例えば、魚であればヒレなど通常は食べない部分が除外された重量というこになります。