栄養学とは

今回は栄養学の初めの一歩。そもそも栄養とは何なのか?について解説していきます。
人間が生きていく為に必ず必要な「栄養」。一日の活力になるだけでなく、病気の予防、病気の改善にも非常に重要です。栄養学を理解する為に、まずは「栄養」の意義について学んでいきましょう。

栄養とは

栄養学基礎
「栄養」とは「生命現象の営み」とされており、地球上に住む生物が必ず行う行為であるという事です。植物や動物、全ての生物は生きるために必要な物質を体の中に取り込んで(食べるということ)、取り込んだ物質を利用し、不必要になった物質を排泄しています。地球上の生物はこのような「営み」の繰り返しによって生命を維持しています。この一連を「栄養」というのです。

上の営みを人間で例えます。人間の場合は、取り込む物質というは「食べ物」の事です。食べ物は口から入ると「消化吸収」が行われ、体の中に取り込まれます。食べ物の成分は、多くの化学反応によってエネルギーや体を再生する物質となって利用されます。そして不要になったものは腎臓でろ過され、体外に排泄されます。

日本で始めて「栄養」という言葉を医学用語として記したのは森鷗外(もりおうがい)と言われています。当初は「営養」という字で使われいましたが、1897年に森鷗外が作成した「衛生新篇」という文献では「栄養」という現在の表記が登場しました。したがって当時は「営養」と「栄養」という2つの字が併用されていました。現在の「栄養」に統一されたのは第2次世界大戦後になります。

栄養、栄養素はどう違う?

「栄養」と「栄養素」では意味が違います。「栄養」とは生命活動の営みのことで、「栄養素」とは体に取り入れる物質の事を言います。

・栄養は 食べる→利用する→排泄 の一連の流れの事

・栄養素は、体に入る「物質」の総称

栄養素は生命活動を営むためのものだけではなく、味覚など、楽しむための要素も含んでいます。
第二次世界大戦後、日本人の食事事情が大きく変わりました。昔にくらべライフスタイルの変化、加工食品の登場、外食産業の発展など、栄養をとりまく環境が変わっています。それに対応するために「栄養学」の研究が盛んに行われてきています。

栄養学とは

栄養学とは学問の事です。勘違いしてはいけないのは、栄養素を学ぶだけが栄養学ではありません。先にご紹介した通り、栄養素は「物質」です。
栄養学は「栄養」を学ぶという事です。つまり、「食べる、利用する、排泄する」までの一連の流れ全てを学ぶ学問が栄養学なのです。

栄養素の種類と働き

「五大栄養素」という言葉を聞いたことはありませんか?栄養素というのは大きく分けると次の5つに分けられます。

・糖質
・たんぱく質
・脂質
・ビタミン
・ミネラル

この5つを合わせて「五大栄養素」といいます。これらの栄養素は体の中で、エネルギーになったり、体を作る(代謝)のに使われます。さらに近年では五大栄養素に加えて「食物繊維」を第6の栄養素、「ファイトケミカル」を第7の栄養素と言われるようになりました。

全ての栄養素の働きは基本的には下記の3つに分けられます。

①構成素

たんぱく質、ミネラルは「構成素」と呼ばれる栄養素です。構成素は「体をつくる」という役割があります。
たんぱく質は体の14~17%を占め、筋肉、内臓、骨に多く含まれます。病気の予防、病気の改善には必須の栄養素です。
ミネラルは微量栄養素で大量に必要になる栄養素ではありませんが、体の4~6%を占めています。主に骨組織や体液(細胞内液、細胞外液)の重要な栄養成分です。

骨組織はカルシウムで出来ているというイメージが強いですが、たんぱく質も骨の形成に使われています。つまり、体をつくるためには、たんぱく質、ミネラルは両方必要という事を理解しましょう。

②熱量素

熱量素とは体内でエネルギーを作るための栄養素をいいます。糖質、たんぱく質、脂質が熱量素にあたります。いわゆる「3大栄養素」です。特にエネルギーを作る上で、糖質と脂質は重要な栄養素です。

糖質は体内に取り込まれるとすぐにエネルギーを作るのに使われます。糖質の多いものは主食である「炭水化物」。炭水化物を摂るとすぐにエネルギーに変換されます。

脂質はエネルギーとして使われますが、過剰に摂取した分は「皮下脂肪」「内臓脂肪」として蓄えられます。脂肪は「栄養素の貯蔵庫」的な役目があり、エネルギーが不足した場合(体が飢餓状態に陥った場合)などにエネルギーとして使われます。

③調整素

ビタミン、ミネラルは「調整素」と言われる栄養素です。調整素は体の「代謝」をスムーズに行う役目を持っています。別の言い方をすれば、細胞の入れ替わりを円滑にするという事です。細胞の入れ替わりが円滑になることで、体の回復、体の老化防止につながります。

ミネラルは、先に説明した骨を形成する「構成素」の役割もありますが、「調整素」としても働きます。つまり、ミネラルは2つの役割をするということです。ミネラルは電解質として血液や組織液に溶け込んでおり、酵素の成分などとして働きます。これが調整素としての働きです。

ビタミンは実に多くの働きをします。補酵素としての役割、抗酸化物質としての役割、ホルモン様物質としての役割など色々働いてくれます。

また、たんぱく質は酵素やホルモンとして働く面があります。正式に調整素とは言えませんが、一部調整素として働きます。
調整素は大量に必要というわけではありません。微量で体に働いてくれる栄養素です。

健康と栄養のかかわり

「健康」は、体が病気にならず、元気な状態を言うと思っている人が多いですが、違います。正式には、身体的・精神的・社会的に健全な状態を「健康」といいます。
健康を害する要因は大きく分けると「外的環境変化」と「内的環境変化」の2つに分けられます。

外的環境変化・・・気温や湿度など、生活環境の変化をいう

内的環境変化・・・病気やストレスなど

この外的環境変化、内的環境変化によって健康が害されることになります。つまり、健康であるためには2つの変化を一定に保つ事が必要なのです。これを恒常性(ホメオスタシス)といいます。恒常性(ホメオスタシス)を維持するためにはWHO(世界保健機構)が提唱する栄養・運動・休養が必要です。

生まれつきの体質を改善することは難しい事ですが、生活習慣を改善することで良い方向に変える事は可能です。その生活習慣改善のためにも栄養を学ぶ意義は大きいのです。

食物摂取と栄養

人間の体は食べた栄養素で作られます。体の組成は、水分を除くと、たんぱく質42.8%、脂質40.2%、糖質2.2%、ミネラル14.8%という割合で出来ています。一方、人間が食事で食べる栄養素の比率は、たんぱく質17.5%、脂質13.5%、糖質66%、ミネラル3%となっています。
これを見ると体の栄養素の割合と、実際に食べている栄養素の割合はとても違う事がわかります。食事は糖質の割合がかなり多いですが、糖質は食べてからすぐにエネルギーに変換され、最終的には二酸化炭素と水に分解され、過剰に食べた分は脂肪として蓄積されるため、体の中に残る量は少ないのです。たんぱく質、ミネラルは食事で摂る全体の割合は少ないですが、徐々に骨や筋肉などの細胞として蓄積していく為、体の割合としては大きいのです。

まとめ

・「栄養」とは食事を食べてから排泄されるまでの一連の「営み」の事をいう
・「栄養素」は、食べ物に含まれる体に取り込む「物質」のことである
・「栄養学」とは「栄養」を学ぶ学問である
・栄養素は、体を作る「構成素」エネルギーになる「熱量素」代謝をスムーズにする「調整素」に分けられる
・「健康」とは身体的・精神的・社会的に健全な状態をいう。
・体の栄養素の割合と、食事で摂っている栄養素の割合は大きな違いがあるが、体の中でちょうど良い割合に調整される

今回学んだのは栄養学の基礎中の基礎の部分になります。これから栄養学を学んでいく上で大切なのでポイントを押さえておきましょう。