このページは管理栄養士を目指す学生や独学で栄養学を学びたい一般の方を対象に作成しています。
今回は糖質の代謝システムである『解糖系の側路』について学んでいきましょう。
解糖系の側路って何?
糖質からエネルギー(ATP)を作るためには、解糖系→TCA回路→電子伝達系という道筋をたどって行われる。
解糖系側路の紹介の前に、この流れがわからない人は以下のページをまずは確認してもらいたい。
・糖質の代謝はどうやって行われる?解糖系・TCA回路・電子伝達系
このうち、解糖系ではグルコースがグルコース6リン酸になりピルビン酸まで変換されるのだが、グルコース6リン酸から解糖系の道をはずれて代謝されることがある。これが解糖系の側路だ。
解糖系の側路3種類
解糖系の側路で覚えておきたいのは3つ。
それが、『グリコーゲンの合成と分解』『ペントースリン酸回路』、『グルクロン酸回路』である。それぞれを詳しく見ていこう。
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グリコーゲンの分解と合成
グリコーゲンとはエネルギー貯蔵形態のひとつで、肝臓と筋肉に蓄えられる。私たちが運動したり活動をして血液中のグルコースが足りなくなった場合にエネルギーとして使われる。いわば非常用エネルギーのようなものだ。
通常、糖質は解糖系でエネルギーを生み出していくが、カラダにエネルギーが十分ある場合は解糖系を離れてグリコーゲンの合成が行われる。
解糖系でグルコースはグルコース6リン酸に変換され、解糖系から離れる。するとグルコース6リン酸はグルコース1リン酸になりUDPという運び屋によってグリコーゲンのそばに運ばれ、グルコースにくっついていく。
このようにグリコーゲンにグルコースがくっついていくことでグリコーゲンの合成が行われていくのだ。
次にグリコーゲンの分解について。
肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲンは『グリコーゲンホスホリラーゼ』という酵素によって加水分解され、グルコース1リン酸に変換され、グルコース6リン酸に変わっていく。
肝臓では『グルコース6ホスファターゼ』という酵素によってグルコース6リン酸がグルコースに変換されてエネルギー利用されていく。※筋肉ではグルコース6リン酸はグルコースに変換されないので注意
このように糖新生から離れる回路のひとつにグリコーゲンの合成と分解がある。
グリコーゲンの合成と分解についてのより詳しい詳細は下記で解説しているので参考にして欲しい。
ペントースリン酸回路
次にペントースリン酸回路を学んでいく。この反応は細胞質中で行われていく。
ペントースリン酸回路の働きで覚えておいて欲しいのはエネルギー(ATP)を作らないことである。
ご存知と思うが、糖質は主にATPというエネルギーを作り出すのに使われる。しかし解糖系を離れたペントースリン酸回路ではATPを作り出すことはしない。(作り出すリボース5リン酸はATPの材料には使われる)
では、ペントースリン酸回路で行われることで覚えておきたいのが以下の2点だ。
・NADPHの合成
・リボース5リン酸の合成
NADPH・・・NADPHとは、正式名称をニコチンアミドアデニンジヌクレオチドという。これは補酵素で脂肪酸やコレステロールの合成に使われる。
リボース5リン酸・・・ATPの材料になったり、核酸(DNA・RNA)の合成に使われる。
グルクロン酸回路
グルクロン酸回路とは、名前の通りグルクロン酸を作り出すための回路である。別名をウロン酸回路ともいう。
グルクロン酸は、肝臓で行われる『解毒』の働きに利用される。ステロイドなどの有害な代謝産物やアミン、フェノールなどの毒物はグルクロン酸の働きによってグルクロン酸抱合体として解毒されていく。
グルコース6リン酸からグルコース1リン酸を経て、UDP-グルコースまではグリコーゲンと同じ経路である。
その後、グルクロン酸を作り、グロン酸、リボース5リン酸を経て先に紹介したペントースリン酸回路につながる。そしてフルクトース6リン酸を経て解糖系に戻っていく。
ポイントまとめ
- 解糖系の側路とは解糖系を離れて行われる反応である
- 解糖系側路で覚えておきたいのは『グリコーゲンの合成分解』、『ペントースリン酸回路』、『グルクロン酸回路』
- ペントースリン酸回路はNADPとリボース5リン酸の合成が行われる。
- グルクロン酸回路はグルクロン酸の合成が行われる
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